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不動産投資の「一口オーナー」制度、相続税対策で注目

不動産を丸々所有するのではなく、部屋ごとに切り売りする区分所有やワンルームマンション投資があります。それでも一度に動くお金は大きいので、最近では投資のハードルをさらに下げた不動産小口化商品も登場しました。

触れ込みとしては、「1口1万円~」、「1口50万円~」、「1口100万円~」」と投資金額も千差万別です。
資金に余裕がない若者までも不動産投資を行うチャンスが到来したとも思えます。

しかし資金に余裕のある富裕層たちの間で小口化された不動産に注目が集まっています。その理由の多くは、資産の分散保有の側面以上に、相続税対策としてのようです。

本記事では、不動産小口化商品や不動産共同所有システムなどの投資案件について考察していきます。

 

不動産小口化商品と不動産投資ファンドへの出資の違い

 

不動産小口化商品は、大きな不動産を運用するために多くの人から資金を集め、投資をしていきます。構造的には、不動産投資ファンドと似ています。しかし、実は法律が異なり、適用される所得の計上も変わってきます。

不動産投資ファンドは、不動産特定共同事業法内の『匿名組合方式』になっており、ファンドの運用益から分配金を受け取る形になります。多くの場合、出資のリスクを抑えるため、賃貸事業者が返済順位の低い劣後出資を採用するため、もしもの時に元本の安全性が担保されます。

不動産も価格変動の影響を受け、損失を出すこともあります。しかし、投資家に損失を負わせることは、ほとんどなく安心して出資ができる金融商品なのです。

不動産の一口商品は、不動産特定事業法内での『任意組合方式』になっています。事業者から不動産を小口で取得し、賃貸経営をするという仕組みです。もちろん、不動産の価格変動リスクも背負うことになり、ファンドへの出資と比べるとリスクは高まります。

お金を出すことは同じでも、リスクの取り方の違いにより、税制が異なります。不動産ファンドへの出資から得られる運用益は、「雑所得」扱いになり、小口商品は、小さいながらも不動産経営を行うオーナーとしての扱いになるため「不動産所得」となります。

 

雑所得は税制上のメリットは薄い!不動産所得であることが重要

 

不動産投資ファンドからの分配金が、雑所得ならば、税制上のメリットは薄くなります。税率は、雑所得ではあるものの申告分離課税が適用され、20.315%(所得税:15.315%、住民税:5%)となります。分配金は損益通算や損失の繰り越しができないため、税制上のメリットが薄くなります。

しかし不動産経営を行って得られる不動産所得の場合、価格変動リスクも内包しているため、損失を出すこともあります。もし、損失が出てしまった場合、他の収入との損益通算ができるようになります。

認められる経費も増えており、様々な観点から、税制上の対策ができるのです。不動産のルールを知れば、支払う金額も抑えられ、結果的により多くのお金を残せるのです。

 

不動産の小口化商品が相続税対策として大活躍!生前贈与としても

 

相続税の観点から見てみると、現金や株式より、不動産の方が支払う税金が少なくなる可能性があります。

現金の場合は額面上の税率が適用され、株式の場合は、贈与する際の時価から金額が試算されます。不動産の場合、評価方法が現金や株式とは異なり、路面価や倍率方式によって決まります。

さらに相続税評価額が計算され、不動産の資産からおおよそ80%の価値と評価されるため、さらに安くなります。土地の場合は、これで決まりますが、建物の場合は法定耐用年数が加味され、さらに資産価値の評価が低くなります。

これは相続税に関しての計算法であり、購入の時より、資産価値が低下しているかは様々な状況によります。不動産を現金化する場合、株式などと違い、かなりの労力がかかります。そのため、現金や株式と同じ様に評価する訳にもいかず、相続税の観点では優遇されています。

さらに配偶者に不動産を相続する場合、小規模宅地等の特例が適用されるため、200㎡までは相続税が50%に減額されます。
不動産を所有することが相続税の対策になる理由は、上記のことからです。

それが小口化された不動産だとどうなるのでしょうか。
一口あたりの金額が少ないことによって、生前贈与として活用しやすくなります。年間110万円までであれば、非課税になるため、毎年コツコツ100万円までの小口を贈与することで、現金をそのまま贈与するよりメリットがあります。

現金で贈与する場合、増えることはありません。株式などある程度、知識を必要とする金融商品であれば、新たに知識を身につける必要があるため、相続された側のリスクが高まります。株式を相続したものの、運用のノウハウがなかったためか、資産を減らしてしまったという声もあります。

不動産の小口化商品の場合は、通常の不動産経営と違い、日々の管理や運営は販売している会社が行うことが多いです。リスクはもちろんありますが、小口化されている性質上、リスクも多くの人で分散することになります。

これらのことが、不動産の小口化商品が相続税対策として人気である理由なのです。
もちろん、税金に関することなので専門家に確認をしながら、正しく相続税対策を行いましょう。

 

資産の相続をよりわかりやすくスマートに

 

一口あたりの金額が少額であることから、生前贈与のメリットが強いということをお伝えさせていただきました。

小口化できる状態で、不動産を所有するという点も相続をスムーズにするメリットでもあります。不動産を丸々所有している場合は、相続の際に資産を計算して分配することになります。不動産以外の資産を所有している場合は、すべてをまとめて計算します。そこで起こり得るのが相続に関するトラブルです。

不動産だけでなく、現金や株式、国債、ビジネスなど様々な形で資産を保有していると、相続の時に揉める可能性が高まります。
当たり前な話ですが、価値基準は人それぞれ違うため、その時の時価が違えど、将来どうなるかまで考えが及びます。もちろん、自分に運用できるか、そうでないかも含めてです。

相続したものの扱えない場合は、現金に変えてしまうこともあります。子どもや孫の事を考え、頑張って作り上げた資産が、水の泡となってしまう可能性も出てきます。

きれいな相続をアシストする上でも、小口化不動産はメリットある投資先と言えます。

 

まとめ

 

不動産投資の一口オーナー制度を活用して、相続税対策ができることを考察しました。小口化された不動産は、一口あたり1万円~100万円まで様々です。しかし、110万円未満なら、生前贈与が非課税になるため活用しやすく、相続計画も立てやすくなります。

さらに不動産であることから、相続時の評価方法も現金や株式などの金融商品と比べて優遇されており、結果的に相続税が減額され、より多くの資産を残すことができます。

また、小口化することで相続時のトラブル(資産の違いによる不平不満)が起きにくくなり、スムーズな相続も実現できます。

少額から投資できるという点が魅力として売りに出されている小口化不動産ですが、その中身は富裕層が節税対策に使えるものです。特に資産が多い人の場合、相続税もかなり巨額になってしまうため、活用を検討しても良さそうですね。

必要であれば、不動産の「一口オーナー」制度を利用し、投資を考えてみてはいかがでしょうか。小口化不動産は、会社によって商品名が違います。しっかりと吟味して、投資を行ってください。