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日産自動車「ゴーン・ショック」日本企業に及ぶ今後の波紋とは

日産自動車のゴーン・ショックにより日本企業への影響が懸念されています。確かにこの騒動により日産自動車のイメージは低下し、信頼性を失墜させることとなりました。しかし、日産の自動車自体の性能や品質は高くその安全性は世界的にも周知されていることも事実です。今後の日産の動向で信頼回復は可能であるか、日本企業だけでなく世界も大きく注目していることでしょう。今回は、日産の現状や今後の動向についてお伝えします。

日産自動車の元会長カルロス・ゴーン氏が逮捕されてから


2019年11月19日、日産自動車のカルロス・ゴーン氏逮捕により日本経済界だけでなく世界経済界までが大きな衝撃を受けました。虚偽記載が問題となった今回の騒動ですが、カルロス・ゴーン氏は不当な拘束であり無罪であると主張しています。確かに報酬の授受が確認されていないため、形式犯や有罪と判断することは難しく、判決に影響する可能性もあるでしょう。また、カルロス・ゴーン氏の退任後の契約による支払いであったため虚偽記載罪に当たるのかは疑問という認識が世の中に広がってきているようです。これは西川社長が恐れていたことの一つであり、判定結果によっては日産自動車側に不利な状況を招くことが懸念されています。

無罪となった場合、カルロス・ゴーン氏の日産自動車の私物化を世の中に認識させることができず、拘束自体の正当性が問われることになるかもしれません。カルロス・ゴーン氏逮捕後、フランスのルノーの取締役会では不正が確認できなかったことで、現在、ルノーの代表取締役会長の解任は見送られています。ルノーの子会社である日産自動車にとってこの状況は良い状況とはいえないでしょう。捜査が終結してしまった現在、ルノーの大株主であるフランス政府はルノーと日産自動車の連合を守り抜くとの意向で、今後、企業だけでなくフランス政府にも大きく影響することが予想されます。

現在の日産自動車とルノーは子会社が親会社より力がある資本のねじれという状態にあります。しかしながら、日産自動車はルノーの株式を15%保有しているのに比べルノーは日産自動車の株式44%を保有しているため、現在のところその支配力はルノーが優勢と見られます。そのことからもフランス政府やルノーの今後の動向が日産自動車の経営を大きく左右するといえるでしょう。今回のゴーン・ショックは世界の日産自動車のブランドイメージを大きく失墜させるものでした。これは、日産だけにとどまらず日本企業全体に大きな損失を与えることとなるでしょう。日産自動車の信頼性の失墜は免れませんが、ゴーン・ショックをきっかけに日産社内は今後の資本関係を見直すという意向が根強くなったことは確かです。騒動後ルノー、日産自動車、三菱自動車の3社協議の結果、スローダウンせず共同でリードしていくことを決定し、今まで独立していた3社が集束することで今後の経営状況や転換もますます注目されることでしょう。

日産ブランドの低下は免れないのか?


日産自動車はルノー、日産、三菱自動車の総帥としてグローバル化を狙う世界的な企業です。一時低迷する時期もあったもののカルロス・ゴーン氏の参入によりV字回復を果たし、今や自動車業界の中核的存在となっています。現在まで日本国内販売にテコ入れし進めてきた中での今回のゴーン・ショックは、日産自動車にとって大きな痛手となることがいえます。カルロス・ゴーン氏逮捕後の11月20日に日産自動車株は前日比5.5%下落し950.7円となり、予想配当利回りが6%になりました。その後26日には、株価は反発し978.4円に上昇、ゴーン・ショックの下落の半分は取り戻したものの、今後の見通しは立っていません。今後の経済状況により、株価の変動にも大きく影響を与えることでしょう。

カルロス・ゴーン氏は日産の経営回復に尽力を尽くしてきましたが、ルノーのCEOを、兼務をきっかけにルノーの利害で動く機会が増え、結果的に今回のような騒動となりました。V字回復をみせた日産自動車ですが、今回のようなゴーン・ショックは多くの信頼性を損なったため、回復を目指すのは厳しいのが現状です。以前よりイメージが低下している日産自動車ですが、ゴーン・ショック以来初となる電気自動車(EV)リーフのe+(イープラス)という高性能モデルの発売を発表しました。従来モデルの自動車1.5倍のリチウムイオン電池を搭載することで、力強い加速だけでなく、充電1回で458キロの走行を実現しています。

このモデルは、前モデルのリーフより加速力があるだけでなく、一度の充電で走行距離が4割も伸びているため、かなり性能が向上しているといえます。カルロス・ゴーン氏の逮捕を受けこの新車発表を延期していましたが、ダニエレ・スキラッチ副社長らからは、日産はここで立ち止まることなくEVのリーダーとして堅持したいという前向きな発言があり、騒動に関しても言及することはありませんでした。ゴーン・ショックの影響も残る中での今回の新車発表には、ブランドイメージの改善を図る目的もあるのでしょう。騒動となったものの日産自動車自体の安全性や品質は保証されているため、上手く行けばイメージの転換を狙えます。このような日産自動車の新たなEVはイメージ回復への起爆剤となるかもしれません。

今後「ガバナンス」を徹底的に強化していくことが必要


後、日産自動車のガバナンスを充実させ強化させていくには、経営陣の責任を明確にすることが必要です。今回のゴーン・ショックの発端はカルロス・ゴーン氏が日産自動車を長期間統治したことにより、ガバナンス体制が機能していなかったことも一つの要因です。日産自動車のガバナンス体制が機能していれば、今回のような騒動が起こることはなかったのかもしれません。日産自動車が今後、経営を持続していくためには、高い倫理観や透明性のある体制が不可欠となるでしょう。そのためには企業内の情報開示を行い企業や社会全体の信頼性を得ることが必要であるといえます。

ガバナンス体制の充実は日産自動車の経営において最重要課題の一つといえます。そのため日産自動車は今後の機動性や透明性の向上を目指し、適切な監督、監査を行うことが重要でしょう。今後、経営目標や方針、企業統治の透明化を図ることで、事業目標の阻害となるリスクを評価することも可能となります。取締役会は個々の職務執行の監督を行っていますが、今後効率的で機能的な経営を行うには構成をスリムにして業務を執行することも必要です。また、日産自動車は職務の監督だけでなくそれぞれの責任者が審議し議論する体制をとり、必要に応じて内部統制を担当する取締役も置いています。これにより、組織全体をバランスよく統治することが可能であるといえます。

このような、徹底的なガバナンス体制により、今後は従業員だけでなく、日産自動車の組織全体の啓発活動に役立つことでしょう。現在、自動車業界だけでなくあらゆる業界で技術開発が急速に進行し、世界経済の革命期であるといえます。それに伴いリスクも複雑化しているため、さらなるガバナンス体制の強化は求められています。効果的で最適な組織を構築していくには、企業経営の要となるガバナンス体制を整え、企業全体が高い倫理観を持って職務に取り組むことが大切だといえるでしょう

まとめ


今回のゴーン・ショックにより日産だけでなく世界にも大きな衝撃を与えました。しかし、日産自動車はとどまることなく電気自動車(EV)リーフのe+(イープラス)を発表し、ルノー、日産、三菱3社の総帥として事業展開を進める意向を示しています。今回の騒動で信頼性を失墜させ日本企業全体にも影響を与えましたが、これから信頼回復を目指し前進することで今後もグローバル企業として注目されることでしょう。