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韓国経済はこのまま景気低迷が続くのか?〜不況型黒字からの脱出〜

韓国経済は長らく低迷しており、「不況型黒字」が続いています。その理由はいくつもあり、日本と通じるものもあります。しかし、日本は「失われた20年」とも呼ばれる不況を脱しました。韓国はいまだに脱することができていませんが、それはなぜなのでしょうか。現在の韓国が不況から脱せられないのは、「誤った経済政策をしているから」とも考えられます。では、どうすれば不況型黒字から脱することが出来るのでしょうか。

中国メディアが「韓国経済の低迷」を分析


韓国と経済的な繋がりの強い中国ですが、国内のいくつかのメディアが、韓国経済の見通しが悪いことを述べています。2018年の3月8日に、中国メディアの「BWCHINESE中文網」が、韓国の経済に関しての記事を発行しました。その内容は、韓国の経済成長が見込めない、というものです。

その理由として挙げられるのは「少子高齢化の進行」です。現在の韓国では、総人口に対しての65歳以上の割合が14.02%となっており、さらに、2017年の出生率はわずか1.05%となっています。このデータに関して記事内では、「80年代に米国の経済学者など多くの人が、人口増加は経済成長に良い影響を与えると論じていた」と指摘しています。また、シカゴ大学のD.Gale Johnson教授の「歴史からすると、人口増加率が低いということは経済成長率も低いことを意味している」という言葉も記事内で引用し、韓国経済の低迷と、少子高齢化の繋がりを指摘しています。

現在の韓国の人口推移から、今後さらに少子高齢化が進むのではないかと考えられています。2031年には、人口は最大の5296万人に達するが、その一方で65歳以上の高齢者が24.5%を占めるのではないかと推定データがあります。また、2060年には人口が4254万人に減少し、そのうち41%が高齢者になるようです。こういった現状から、韓国現地新聞である「コリア・タイムズ」では、「韓国中央銀行は、お札は印刷できても、赤ん坊は印刷できない」と述べています。

また、別の中国メディアは、このままでは韓国は「失われた10年」に突入するのではないかと懸念しています。失われた10年とは、経済の低迷が10年ほど続くことです。その理由としては、「経済を成長させる動力が不足している」というものが挙げられます。韓国の主力産業は造船や自動車、半導体などの「加工、製造」や「輸出」の分野です。しかし、どの製造分野も、様々な問題を抱えており、成長は伸び悩んでいます。また、人工知能や電気自動車、ロボットのような新しい分野でも、他国に比べて競争力がないと考えられています。新しい分野で競争力がない原因の一つとしては、やはり少子化が挙げられます。若者が少ないため、新しい分野を牽引していく若者を十分な数育てられないからです。

「経済を成長させる動力」の根源となるのはやはり若年層になりますが、韓国では少子高齢化が進んでおり、そういった根源的な動力の不足が、韓国経済の低迷、停滞を招いているのではないかと、中国メディアは分析しています。

韓国経済の特徴「不況型黒字」とは何か?


韓国経済の特徴は、経済収支が黒字にも関わらず不況という「不況型黒字」であるということです。経済収支というのは、「輸出額」から「輸入額」を指し引いた数値のことで、これがプラスになる、つまり輸出額のほうが多かった場合黒字になります。輸出額のほうが多いということは、国の中にお金が流れ込んでくる状態なので、普通は好景気になります。しかし、様々な要因により好景気にならず、不況なままであるという状態になることもあり、現在の韓国の経済は、まさにそういった状態です。

韓国の経済が不況型黒字な理由のひとつとして、「貿易依存と内需の低迷」が挙げられます。韓国の貿易への依存度は非常に高く、その結果内需を疎かにしています。内需が低迷した結果、不動産バブルが弾けたり、国内消費が落ち込んだりしており、国内の不況に繋がっています。特に不動産関係の経済の落ち込みは顕著で、少子高齢化と合わさって空き家が急増したり、家を買いたくても賃金が少なくて買えないなどの問題が起きています。

また、不況型黒字のもう一つの原因として、「スタグフレーションの進行」も問題になっています。スタグフレーションとは、停滞を意味する「スタグネーション」と、「インフレーション」の合成語で、経済停滞と物価の持続的な上昇を意味します。農産物やガソリン代など、日常生活に必要不可欠なものの価格が、猛暑や原油価格の高騰に伴って韓国では上昇しています。また、現政府の最低賃金引き上げも、良くない方向で作用しています。無理やりな最低賃金の引き上げによって、企業はその賃金を解決するために、商品やサービスの値段を上げなければいけません。その結果、賃金は上昇しても、結局物価の高騰に拍車を掛けてしまっています。

韓国での不況型黒字の原因は、貿易依存とスタグフレーションの進行による内需の低迷が大きいでしょう。不況型黒字が進行することにより、国内消費が低迷します。国内消費が低迷すると、輸入量が低下するので、余計不況型黒字の規模が大きくなります。こういった複合的な効果から、韓国での経済は不況型黒字が進んでいます。

韓国文在寅(ムン・ジェイ)大統領に支持率低迷


現在の韓国大統領である文在寅大統領は、2017年5月から就任しています。就任当初は、前大統領が経済の悪化を解消できないまま罷免での辞任をしたことや、就任以前から新たな経済政策を掲げていたこともあり、80%台の高支持率を得ていました。しかし、2018年12月には、支持率が大きく低迷しています。韓国の世論調査会社である「リアル・メーター」が発表した調査によると、文大統領の支持率は48.4%です。また、9週連続で支持率が低迷しているという現状も発表されています。不支持の世論も大きく、同調査では46.6%です。この数値は、就任以来最大の数値になっています。

こういった不支持の原因は、「スタグフレーション」と「雇用問題」が解決できていないからだと考えられます。現在の韓国では、先ほども述べたように、国民の賃金が少ないにも関わらず物価は上昇しているという状態が続いています。文大統領は所得増と消費拡大による「所得主導成長」を狙って経済政策を進めています。実際、2018年の夏ごろには、最低賃金の引き上げを決めました。しかし、この賃上げにより、中小企業や個人経営者は圧迫されています。その結果、サービスや商品の値上げ、あるいは社員のリストラなどにも繋がっており、結果として韓国国内の消費は拡大が出来ていません。そういったことにより、韓国国民は、生活向上が体感できず、文大統領に失望し、大統領への不支持に繋がっています。

また、国民生活第一を掲げ、雇用拡大を国民に約束したのにも関わらず、それが達成できていないという現状も不支持に繋がっています。特に若者の失業率は高く、15歳から29歳までの失業率である若年失業率は11%を超えています。全年齢を合わせた全体失業率が4.2%であることを鑑みると、高めの推移だということが分かります。

就任時から「国民生活第一」や「所得主導成長」などを掲げ、雇用の拡大や失業率の低下、所得増と消費拡大などの、現在の韓国の抱える問題を解決すると国民に約束していた文大統領。しかし、就任から一年を越えてもそれらが成果をなさず、むしろ無理やりな最低賃金引き上げなどにより国民の首を絞めていることが、支持率の低下に繋がっているのは明らかです。

まとめ


韓国経済が抱えている問題は、「内需の低迷」にあります。それを解決するためには、消費拡大が必要不可欠です。しかし、消費拡大を図るために、雇用の問題や物価の問題が解決できていないにも関わらず、無理やりな賃金向上を図ってしまったことが、現在の韓国経済の問題になっています。経済の構造改革だけでなく、金融政策なども含む政策をしなければ、韓国経済に先はないとも言えるでしょう。