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一般公募130位「高輪ゲートウェ(山手線の新駅名)に異論の声

2018年に世間の話題となったもののひとつといえば、山手線の新しい駅の名称が「高輪ゲートウェイ」に決定したことです。駅の名称にしては奇抜であるため、ネット上では賛否両論というより「なんでこんな名前なの?」という否定的な意見が目立っています。今回は、高輪ゲートウェイの詳細やこの名称になったいきさつ、世間の意見などについて紹介します。

JR東日本・山手線の新駅名を「高輪ゲートウェイ」発表

2014年6月3日、JR東日本は新たな計画を発表しました。それは、山手線に新しい駅を建設し開業させるという計画です。JRは、この新駅を品川再開発プロジェクトである「グローバルゲートウェイ品川」の中核施設として位置づけて、建設をすすめるという表明したのです。

この駅が通る沿線としては、山手線は1971年に開業された西日暮里駅、京浜東北線では2000年に開業した埼玉副都心駅以来の新しい駅です。新駅は、品川駅から約900m、田町駅から約1300m、泉岳寺駅から南東に約300m離れた場所に建設予定となっています。新しい駅が建設される際に利用する土地は、東京総合車両センターの田町センター(旧・田町車両センター)の区域です。センターの設備や車両留置を、場所を整理して空く、約13ヘクタールものスペースが再開発用地として利用されます。

駅舎は、地上3階・地下1階建てで、1階が駅のホーム、2階が改札および外への出入り口とイベントスペース、2・3階に各種店舗が入る予定で、全体の高さ約30mというデータです。駅舎のトータルデザインは渋谷駅や新国立競技場のデザインを手がけた実績のある隈研吾氏、照明デザインは、建設照明デザイナーの面出薫氏が担当です。

新駅は、2020年の東京オリンピックならびにパラリンピック開催に合わせて暫定開業し、2024年度に本開業の予定です。駅がひとつ増えることによって交通の便もよくなる、そして、駅ができれば周辺も活性化され経済効果もあるため、経済的に見ても新駅誕生は明るいムードに満ちていました。さらに、来たる東京オリンピック開催と同時に華々しくスタートするという縁起の良さも、新駅誕生の明るさを物語っています。新駅開業予定地の近辺を利用する・住居している人々にとって、この新しいニュースは大歓迎で迎えられました。

そして、新駅建設の発表から3年後の2017年、ついに建設工事がスタートしました。この時点では駅の名称はまだ決まっていませんでしたが、着々と進む建設工事を見ながら駅近辺の住民は、数年の後の新しい駅の開業に心を躍らせたのです。しかし、2018年、この明るいニュースに不穏な雲がのしかかります。それは、新駅の名称に関する問題です。

新駅の名称は、JR東日本では初という一般応募で決定されるというシステムを採用し、同年の6月5日に応募を開始したところ、6万4052件・1万3228種類もの応募が殺到しました。その結果、集まった名称の1位は「高輪」で、応募数は8398件という結果になりました。しかし、12月4日、JR東日本は「高輪ゲートウェイ」を新駅の公式名称として発表したのです。

この一風変わった名称が採用された理由に、JR東日本は「新駅の土地は昔から街道が通じ江戸の玄関口 (ゲートウェイ) としてにぎわいをみせた地である」「歴史を伝承してこれからも交流の拠点としての機能を担うため」「過去と未来、日本と世界、多くの人々をつなぐ場所として、地域全体の発展につながるようにとの願いを込めて選定した」といった意味合いのコメントを発表しています。

一般公募130位なのに選ばれた理由とは?

山手線新駅の応募で決定された駅名「高輪ゲートウェイ」は、応募総数のなかでは130位という結果でした。他の名称1位「高輪」2位「芝浦」3位「芝浜」4位が「新品川」と「泉岳寺」に比べたら、高輪ゲートウェイは130位で、たったの36件という応募数です。普通に考えた場合、1位の高輪が選ばれるはずですが、なぜ、130位で、なおかつ奇抜な印象を与える高輪ゲートウェイが正式駅名として選定されたのでしょうか。

駅名というものは、決定されるまでに細心の気使いを払って進められるものとされています。全国にはたくさんの地域があり、同名の地域名も少なくありません。新駅の名称が決定しても、すでに他の駅名で使われているケースもあります。そのため「かぶり防止」をするために一風変わった名称を付けたら、かぶる心配もありません。そして、気を使う点は他のもあります。それは新駅近辺の地域に対してです。

今回の新駅開業は、JR東日本だけでなく、地域に取っても大きな話題です。新駅が注目されればその地域には大きな経済効果が見込まれます。地域にとって自身のエリアに新駅が誕生することは、地域をアピールするための絶好の機会なのです。そのため、地域の地名をそのまま駅名にする場合、慎重に行わなくてはいけません。新駅がひとつの地域におさまっていれば、駅名を地名にしても何も問題はありません。しかし、沿線によっては、線路を挟んでふたつの異なる地域が隣接していることもあります。この場合、Aという地域を駅名にすると、線路を挟んだBという地域の人々にとっては面白くありません。

高輪ゲートウェイ駅周辺に注目してみると、駅の東側は港区の芝浦、西側は高輪です。芝浦駅という駅名にした場合、高輪側から反発があることが予想され、高輪駅という駅名にしても芝浦側から同様のアクションが予想されるでしょう。過去のこういった事例の解決案としてあったのが、地域名を合体させた駅名にするというアイデアです。東京メトロに新しい駅が誕生したとき、駅を挟んで隣接した小竹町と向原の名称を合体させて、新駅を「小竹向原」という名前にした例もあります。しかし、この場合でもどちらの地域名を最初にするかという問題が生じて揉めるケースもあるのです。

このように、一方に気を使えば他方から苦情が来て、他方に気を回せば、違う方面からまた苦情がくるというのが、新駅の名称に関する問題となっています。そういった複雑な事情を踏まえたうえで見てみると、今回の高輪ゲートウェイという奇抜な名称の決定は、どこにも角が立たないためのJR東日本による苦肉の策ともいえるでしょう。

「高輪ゲートウェイ」名前に違和感など厳しい声も

山手線の新駅・名称が「高輪ゲートウェイ」と発表されたとき、ネット住民から多くのリアクションが起こりました。その多くは否定的な意見です。新駅名の批判は、署名運動まで起こるほどに発展しています。単純にネーミングにセンスがないと意見に加え「名前が長ったらしくて言いづらい」「事務処理的にも問題が生じやすい」という意見も多いです。

また、批判が起きている原因は、他にもあります。それは、名称を一般で募集したにも関わらず「JR東日本が応募を無視して独断で決定した」「1位の名前ではなく、よりによって130位のものを採用した」という点です。JR東日本は、募集を開始した際「「2020年に誕生する新しい駅の名前を、私たちは皆さまと一緒に考えたいと思います」といったコメントを発表しています。皆さまと一緒にと言っておきながら応募の順位をまったく無視した、しかも130位の決してセンスが良いとはいえない名称に独断で決めてしまったことが、多くの批判を集めている原因といえます。

先述した通り、JR東日本側にも各方面に気使いをしなければいけないという事情が予想されます。しかし、ネット住民にとっては、そのような事情は関係なく「最初から一般応募しなければよかったのでは。応募の意味がない」という意見が、ネット上に多く飛び交っています。

果たして、高輪ゲートウェイ問題は、批判を受け止めて2020年の暫定開業前に名称変更がされるのか、それとも、この名称が変更することなくそのまま決行されるのか、今後も多くの人に注目されることでしょう。

まとめ

高輪ゲートウェイに関する問題は、ネットでは真剣に批判している人もいれば面白半分で取り上げている人もいます。ネット住民は、ネタとして扱っている面もあるだけに、すぐに批判が沈静化する可能性もあります。単純なネーミングセンスの問題ではなく、経済的・地域的にみてさまざまな問題を抱えているだけに、2020年のオリンピック開催までに、どのような動きをしていくのか気になるところです。