事業承継の時のM&Aで、気になるのは仲介をしてくれる業者のことですね。M&Aは必要だとわかっていても、具体的な話になると、どういう仲介会社を選んでいいのかその基準がわからない。そんな人が多いのではないでしょうか。
以下に事業承継時のM&Aを成功させるための、仲介業者を選ぶ際のポイントなどをまとめました。業者を選ぶ際の参考にしてください。
事業継承で使うM&A 仲介業者を選定するポイント
事業承継を目的としたM&Aを、スムーズに売り手企業と買い手企業間で行うために、仲介業者の存在は重要です。安易に仲介業者をセレクトしてしまうと、双方の会社にとってデメリットとなってしまう可能性があります。仲介会社の吟味は大切なのです。その際、M&A 仲介業者を選ぶポイント3つを以下に記します。
1つ目には、M&A仲介会社の過去の実績等を調べて、比較するということが重要です。仲介の成功の可否は、仲介業者のノウハウに左右されることが多いのです。と言いうのも、企業の売却や営業譲渡などには、事業経営や法律に関する知識など、かなりの専門知識が要求されるからです。各社の実績は、そのままその会社の実力を測るデータと言えます。
事業年数が長い、老舗であることも会社の信頼度と比例している傾向があると言えます。
2つ目には、各仲介業者の得意分野を把握することも大事です。会社によっては、ある分野の業界に特化して専門化しているところがあります。飲食関連・IT業界に強い会社もあれば、かなりの専門性が求められる金融業界に特化した会社もあるのです。
これらの専門性は、実際の営業力にも影響してきます。専門性の高い分野に関して、それに強い仲介業者であれば、その分野で幅広いネットワークを構築出来ている場合があるのです。既に任意の企業との強固なパイプを築いているケースもありますので、そういう社の営業力はかなり優秀であるとも言えます。
したがって、専門性に特化した会社・得意分野がある会社がある場合は、それを見極めて依頼先を決めることが大切であるということでしょう。
3つ目に、大事なポイントとして、総じて仲介業者の「熱意」が挙げられます。仲介会社は短期間の間に相当な細かい作業をすることを求められます。そのため、短時間で相手の要望を簡潔に捉えるヒアリング能力や、フットワークの軽さなども大切です。そのような能力が高い会社であれば、スムーズに事業承継が完了できるでしょう。
また、仲介業者からは、事前に見積もりを出してもらいましょう。その際に社員の態度や能力を見極めることも出来ますし、依頼料金の比較も可能です。
前述したように、もちろん料金面も大切な要素です。以下に有用なアドバイスが見込める会社であっても、コスト的に高すぎる場合は、依頼は出来ません。見積もりを出してもらい、各社の金額を比較確認することも大切な要素でしょう。
なぜか両手で仲介手数料をもらう慣習
M&Aの仲介業者は、「両手で仲介手数料をもらう」と言います。これはM&Aの取引の際の「両手取引」に由来しているのでしょう。M&Aの売り手と買い手にそれぞれ別の仲介業者が付くことを「片手取引」、同じ仲介会社が入る状態を「両手取引」と言うのです。
この「両手取引」と言うのは、M&A大国のアメリカではまずあり得ないことです。ニュースで話題になるような大手のM&Aについては、売り手と買い手にそれぞれFA(フィナンシャル・アドバイザー)が付き「片手取引」を行うことが常です。
「片手取引」の場合、仲介業者はあくまで自社だけの味方です。したがって、依頼者が売り手であるケースでは、事業承継をしたい側と仲介会社の利害は一致しています。ですので、売り手側は取引の際、事業の値段を上げやすいのです。売り手企業の利益を考えるなら、M&Aの仲介業者は「片手取引」で仲介をしてもらった方が良い、と言うことになるでしょう。
「片手取引」に関する説明で察しがつくかもしれませんが、「両手取引」と言うのは、これとは逆のケースになります。仲介業者は、名目上売り手と買い手双方の利益を考えながら、動くということになります。しかし、両者を立てて仕事を遂行するというのは、実際は形ばかりのことが多いようです。
「両手取引」の場合、仲介会社は、具体的にお金を払う側である、買い手企業の言い分に飲まれがちです。安く買いたい思惑の買い手に引っ張られる形で、取引交渉が終始しがちであり、売り手にしわ寄せがいく形態になりやすいのです。そして、買い手の言いなりになり、無理矢理に取引が制約させられてしまう傾向が強いとも言えます。「両手取引」では売り手側は置き去りにされる可能性があります。
売り手は出来る限り自社の希望する条件を受け入れてもらい高く売りたい、買い手は自社に問題ない条件以外は、条件を受け入れずに事業を有利に安く買いたい、という算段があります。
「両手取引」では、M&Aに着手し始めた段階では売り手側は仲介業者を信用していますが、M&Aの交渉が進んでくると、売り手は仲介会社に対して、どちらの味方なのかと言う疑念を持つようになることが多いようです。
「両手取引」とは、仲介業者は、売り手と買い手の両方と業務委託契約を結び、両者から成功報酬を貰うことなのです。仲介会社にとっては「両手取引」の方が、収益が大きいと言えますね。単純に考えても仲介の利益は倍になるからです。そしてこれは日本特有のシステムとも言えるのです。
さらに、売り手は1度きりのお客ですが、買い手はまたいつか顧客になる可能性があります。ですので、買い手側に不利な契約になるような交渉に抵抗感を持つ業者がいるケースもあるのです。また、買い手にも予算枠がありますので、その予算内で案件を成立させて、成功報酬を貰いたいと思う仲介者は少なくありません。
銀行は大型のM&A を手掛けることも多いのですが、最近は中小企業のM&A に、銀行は介入しません。金融庁の指導が入ったので、銀行は「両手取引」の仲介を避けるようになりました。
M&A はやり直しが出来ないことです。
自社の重要な事業承継の為のM&Aは、「両手取引」の仲介業者よりも「片手取引」で、自社だけの味方である仲介会社と進めた方が良いと言うことかもしれません。売り手側は、自社の言い分だけを考えず、相手側の主張や本音を探りながら、最終的に着地点が見えれば、やはり「片手取引」にメリットがあるのではないでしょうか。
独占契約は選択肢を大きく狭めることになるので注意
M&A交渉の中間で、基本契約書を締結する時に、「独占契約」と「優先契約」では、どちらが良いでしょうか。独占契約とは、買い手が一定期間、売り手と独占的に交渉できる権利のことです。売り手企業は、ある特定の買い手企業以外とは、当該M&Aに関していかなる合意・勧誘・交渉も行えなくなります。
独占契約は、買い手企業にとってはメリットがあります。売り手企業を他の買い手企業に取られることがありません。したがって、安心してM&A の取引を進めることが出来るのです。しかし、売り手企業は、買い手企業を複数候補から選べなくなります。時間をかけて調査した結果であれば、それも選択肢の1つでしょう。
ですが、交渉の可能性を限定することになることから、独占契約は注意が必要であると言えます。
もう1つの優先契約について見ていきましょう。こちらは、売り手企業にとってメリットが大きい契約です。売り手側は買い手候補を複数社、同時にその企業価値や買収の詳細条件について比較検討することが出来ます。有利な条件を出した企業から優先的に交渉をすることが可能なのです。売り手側はより条件の合う買い手側を見つけることが出来ます。
しかし、デメリットはあります。交渉権が独占的ではなく、あくまで優先契約ですので、買い手企業がより条件に合った売り手企業を探し出した場合、そちらに買い手を取られてしまう可能性はあります。
【まとめ】事業承継の為のM&Aには仲介業者の選定が大事!
事業承継の為のM&Aであれば、仲介業者は「片手取引」にするべきでしょう。そして、実績がある会社を選ぶべきです。加えて、自社に有利な専門性を持った仲介であれば、なおさら心強いと言えますね。
さらに、熱意がある有能なスタッフが揃っていれば申し分ありません。そのような仲介会社であれば、優先契約でも売り手が有利になるよう、交渉を進めてくれるでしょう。M&Aには、仲介業者選びが肝心です。