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親族間で争いが発生しかねない不動産相続。まずやるべきこととは?

親族間で争いが発生しかねない不動産相続。まずやるべきこととは?

不動産に興味がある人の中には、不動産相続について知りたい人もいるでしょう。不動産相続は親族間で争いが発生しやすいので、対処法を知っておくことが重要です。ここでは相続する人が複数名いた場合や相続する不動産の方針を決めるポイントなどを解説します。また、相続登記など名義変更の手続きの方法と必要書類についてもご紹介していきます。

兄弟など相続する人が複数名いた場合どうなるのか

不動産を相続する人が複数名いた場合、どうしたら良いのか疑問を抱く人もいるのではないでしょうか。現金や株などと違い、不動産は簡単に明確に分けるということが難しいからです。不動産は資産価値が高い場合が多いため、一般的に親族間で争いが発生しやすいです。例えば、不動産を所有している人物が亡くなった場合、生前に遺言書が作成してあれば、問題は少なくて済むかもしれません。ですが遺言書がない場合、一緒にその不動産に暮らしていて亡くなるまでの長い間介護をしていたとしても、確実にその不動産の所有者になれるわけではないのです。

亡くなった人の遺言書があれば他の相続人を説得する材料になりますから、遺言書の有無をまず確認することが大切です。そうした遺言書がなく一般的な不動産相続の手続きを踏む場合は、兄弟など相続する人が複数名いる際には話し合う必要があります。その話し合いで兄弟などが全員納得し、合意するのであれば、1人だけが不動産を相続することも可能です。そうなれば、特に揉め事もなく、スムーズに次の手続きに進めます。しかし、問題は相続希望者が複数いた場合です。相続人の中で自分が不動産を相続したいと何人かが言い出せば、解決を巡って話し合いを重ねる必要が出てきます。

売却、運用、自ら利用?話し合って方針を決めることが先決

不動産を相続する場合、相続する人達が話し合って方針を決めることが大切です。売却や運用、自ら利用するといった選択肢が存在していますが、それぞれの方法にはメリットもデメリットもあります。

そもそも、不動産を複数の相続人で分ける方法は4つ考えられ、1つ目の方法「共有分割」は相続する人全員で不動産を共有する方法です。例えば、2人兄弟が1つの土地を相続した場合、兄も弟もその土地に対して半分ずつの権利を有するというものです。1つの土地を2つに分割しているわけではなく、1つの状態のまま兄弟が共有して相続します。どちらも土地全体を使用することができるというメリットがあり、仮に土地を貸し出して賃料を得た場合は利益を分配します。

2つ目の方法「換価分割」は、不動産を現金に換えて相続する人たちで分配する方法です。家などのように分割できない財産を売却することで現金に換え、分割できるというメリットがあります。不動産を手放さなければなりませんが、公平にきっちりと分割できるので揉めにくい方法と言えるかもしれません。

3つ目の方法「現物分割」は1つの土地を2つ以上の土地に分割し、独立した土地にした上で相続する方法です。分割した土地を所有しているのは、それぞれの相続人です。土地を分割してしまうため、土地の評価額が下がるケースが懸念されますが、管理について揉めるようなことはまずありません。

4つ目の方法「代償分割」は、不動産を相続した人が他の相続する権利を持っていた人たちに代償として現金を渡す方法です。例えば、2人兄弟で2,000万円の土地を兄が相続したとします。その場合、本来であれば弟が受け取るはずだった1,000万円分の土地を分割して渡すのではなく、1,000万円の現金を支払います。兄の方は不動産を得て、弟の方は現金を得ることになるのです。得た財産は異なりますが、金銭的には公平であると言えるでしょう。不動産を相続する人物がまとまった現金を用意する必要がありますが、共有することなく、不動産をそのままの形で相続することが可能です。

これら4つの方法の内、どれを選ぶか話し合う際に大切なのはその先のことまで考えることです。例えば、4つの方法の内、換価分割だけは不動産が残りません。思い出のある家や土地を手放すことになりますから、よく話し合って後悔しない選択を選ぶことが後々遺恨を残さないためにも大切です。均等に現金で相続できるという利点だけに目を奪われて安易に選ぶのではなく、先のことまで考えてしっかりと相談しましょう。

同じように、共有分割は話し合いでなかなか決まらなかった時に選びたくなる方法です。共有分割は家や土地といった不動産をそのまま残すことができますし、相続人全員で共有するので一見最も良い選択肢に見えるかもしれません。しかし、後々まで考えた場合、建て替えをしたり売却しようとするたびに相続人全員の同意が必要となり、手間がかかります。共有している相続人の誰かが亡くなった場合も、次の相続をどのようにするかで揉める可能性が出てきます。どの方法を選ぶ場合でも公平性を保ち、しっかりと話し合って方針を決めることが大切です。

相続登記など名義変更の手続きの方法と必要書類

不動産相続を行う際、相続登記など名義変更の手続きを行うのが一般的です。相続登記は必須であると思い込んでいる人もいるかもしれませんが、実際は法律上で定められた期限はありません。つまり、相続登記を行わず放置し続けたとしても、法律上罰せられることはないのです。しかし、相続した不動産の権利を相続登記によって確定しないと、後々相続人同士が揉める原因になる可能性があります。親族間で相続に関して争う事態を避けるためにも、不動産の相続登記は忘れずに行いましょう。

相続登記の手続きを流れに沿って説明すると、まず不動産の元の所有者と相続する人の戸籍謄本等を集めます。誰から誰に相続されるのか調査が必要になるからです。例えば、2人兄弟だと信じていたものの、実は隠し子がいて相続人が増えるというケースもあり得ます。不動産を所有していた被相続人の戸籍謄本等は、生まれてから亡くなるまでのものが必要です。引っ越しを繰り返してそのたびに戸籍を動かしていた場合は、いくつも集める必要が出てきます。相続人の戸籍謄本は現在のものだけで構いません。戸籍謄本等は必要書類であり、1つでも足りなければ相続登記は不可能ですから抜けが無いよう、必ず全て集めるようにしましょう。

次に、相続人全員で不動産の相続について話し合い、遺産分割協議書を作成します。相続人同士が納得いくまで話し合うことも大切ですが、それを書面に残すことも重要です。遺産分割協議書は、不動産の所在地や不動産を相続する人の氏名などを記載します。遺産分割協議書も重要な必要書類です。遺産分割協議書を作成したら、相続人全員が署名して実印を押します。印鑑証明書も相続人全員分を用意します。もし実印を登録していない相続人がいた場合は、事前に実印を作って手続きを済ませておきましょう。他にも相続人に未成年がいる場合は、特別代理人を家庭裁判所で選任してもらうという手続きも必要になります。特別代理人といっても難しいものではなく、相続人でない親族を選ぶのが一般的です。

また、相続登記をする際には納税する必要もあります。そのため、納税金額を計算するために必要となる固定資産評価証明書も取得しなくてはなりません。相続登記など名義変更の手続きは手間がかかり、必要書類も複数あるため、専門家に任せるケースも多いです。

【まとめ】話し合いの結論が出たら相続登記などの手続きを行うことが重要

不動産は分割しづらく資産価値が高い傾向があるため、親族間で争いが発生しかねません。そのため、兄弟など相続する人が複数名いた場合はよく話し合う必要があります。不動産を売却するのか、運用するのかといった方針を決めましょう。話し合いの結論が出たらそれで満足せず、相続登記など名義変更の手続きを行うことが重要です。現在不動産を所有している人は自分の死後の争いを減らすためにも、遺言書で意思を明確に残しておくことをおすすめします。