タワーマンションへの投資を考える上で、階数によって資産価値が変わることを理解する必要があります。これまでは階層間による価格の差で、有利な相続税対策ができていました。しかし、不公平感の改善のため、税制が改正され、不動産取得税や固定資産税も改正前とは変わったため、再度認識しておきましょう。
本記事では、タワーマンション(高層マンション)投資を行う際に有利になるような階層の選び方などの知識を提供していきます。
世間で言われているような、タワーマンションで相続税対策を行うのは難しくなったのでしょうか。認められなかったケースも含めて、考察していきます。
タワーマンションにおける階層間の固定資産税評価額はどのように変化?!
タワーマンションの資産価値は、高層階であればあるほど、高くなります。これは、高層階の方が、眺望が優れていることや騒音が少ないなどの要因で価値が高まり、家賃が高額に設定できます。
それに応じて固定資産税なども高くなったのかと言うと、まだまだ乖離はあるように感じます。どれくらい高くなったのか、制定された係数を見ていきましょう。
計算方法は、1階を100として階層が1上がるごとに、約0.256を足した数字が固定資産税評価額にかかってきます。
つまり1階と10階の差は、約2.5%になります。
タワーマンションの多くが1階や2階はエントランスやラウンジとして作られているため、居住区はありません。3階からが居住区になるかと思いますが、3階と43階だったとしても、10%程度の違いになります。
30階以上の高層階は、人気があるとよく言われます。1階と30階の差だったとしても、7.5%程度の差しかありません。タワーマンション投資を考えるならば、高層階の中でも基準の階を決めて、それを中心に選んでいくと良いでしょう。
階層による実売価格と固定資産税評価額の比較
タワーマンションの階層による実売価格とその取得金額による固定資産税評価額を実際に比較してみましょう。今回、計算する上で参考にしたのは、都内の東京メトロ有楽町線月島駅より徒歩8分にあるタワーマンションです。
同一の間取りかつ専有面積も同じという中古物件があったため、見比べるにはちょうどよいです。違いは、階層と部屋の向きです。向きによっても人気のあるないがあるため、考慮に入れる必要はあります。
●間取り:1LDK、専有面積:50.95㎡の単身者向けタワーマンション(1991年築)
- 13階(東向き):5,980万円
- 22階(西向き):5,800万円
このふたつを見比べてみると、西向きのほうが世間的な資産価値は下がるため、多少安く設定されているのかもしれません。
さて、どれくらいの差が出るのでしょうか。
階層別補正率は、1階増すごとに0.256増えます。
13階は、3.328
22階は、5.632
となります。
各住戸の専有床面積にかかってくるため、50.95㎡に補正をかけると
13階は、52.65㎡
22階は、53.82㎡
と割り出されます。
なお計算式は、
【各住戸の固定資産税=一棟全体の固定資産税×((各住戸の専有床面積×階層別専有床面積補正率)÷補正後専有床面積の合計)】
です。このタワーマンションの一棟全体の固定資産税は、複雑な計算になるため、仮に工事されている情報から推測していきます。
ちなみに、この地の路線価からみた土地の固定資産税は、1㎡あたり105万円で、9,438.22㎡の敷地面積、なお建物の延床面積は、118,641.98㎡です。これらから住戸別の固定資産税評価額を割り出してみると
13階は、55,282,239円
22階は、56,510,539円
と計算されます。簡易的に、固定資産税は、固定資産税評価額の1.4%になるため、
13階は、773,951円
22階は、791,148円
です。
今回は、たまたま実売価格を見比べて、階層が高い部屋の方が高かったわけですが、固定資産税は、約2万円の違いという計算になりました。高層階の方が、基本的に資産価値が高く、9階の差で2万円程度しか差がつかないのであれば、さらに高額な上層階のほうがお得感は強く感じます。
他にも、軽減税率などの特例もあり、優遇されることもあるため、実際はさらに低くなると考えられます。また、計算結果は、ひとつの参考として留意し、実際の計算にあたっては、専門家に割り出してもらうと良いでしょう。
タワーマンション投資が相続税対策として活用できる?!
タワーマンションにおける税制改正が行われる前には、相続税対策として活用されていました。しかし、不公平感をなくすための税制改正が行われたため、固定資産税評価額が上昇し、そこから計算される相続税も上がってしまうため、相続税対策には向かないという噂が流れました。
確かに以前に比べると固定資産税も上がり、その結果相続税として支払う額も増えたと言えるでしょう。しかし、1階と30階で固定資産税評価額が10%程度の差ならば、相続税対策としてタワーマンション投資が活用できると考えられます。
また高層階の方が実際の取引価格が高いため、相続後に売却することでより多くの現金を取得することができます。ただ、客観的な観点から相続税の対策として露骨に行った場合、認められなくなってしまうこともあるため、実際の相続税対策としてタワーマンション投資を活用するならば、税理士や弁護士など、専門家に相談を乗ってもらうと良いでしょう。
タワーマンション相続。税金対策として否認された実例
タワーマンションを活用した相続税対策において、実際に否認された実例を見ておきましょう。
2007年7月に重度の認知症の上、入院。その翌月に、父名義でマンションを購入(2億9,300万円)。同年9月に死去。2008年に父名義のマンションを相続。この時の相続税評価額は、約5,800万円。2008年7月に約2億8500万円でマンションを売却。
このように露骨な相続税の節税対策は否認されます。そもそも、マンションを取得した際には、認知症を患い、本人の意思決定がなされたかが怪しいこと。そして、相続した後にすぐに売却、そして実売価格と相続税評価額の開きが大きく、相続税対策としてあえてやったことは明らか。
このように明らかな税金逃れの様な相続は、相続対策として厳禁です。
基本的に投資用不動産の場合は、賃貸収入目的で貸し出すことがメインとなります。もしくは、居住用として自分たちで活用する。さらに、将来的に売却するにしても、相続後、短い期間で売却するのではなく、税務調査がしっかり終わるまでは持ち続けることを行えば、節税効果は高いと言えるでしょう。
否認された先の例でも、現金で2億9,300万円を所有していた場合、税率は45%(控除額は2,700万円)です。1億円を超える税金を支払うことになります。それが、不動産に変えたことにより、半分になります。
さらには、賃貸収入を得ることもできるため、まっとうに行えば、相続における税金対策として効果が高いと言えるでしょう。
タワーマンションの場合、保有期間が多少長くなっても、あまり評価が下がらないというのも魅力的なポイントです。
タワーマンション低層階の魅力!実用面で評価高い
タワーマンションにおける、階層による固定資産税評価額が変わり、低層階より高層階の方が、税率が高くなったもののその差はまだ小さく、高層階の方がうまみは大きいといえます。ただ高層階の場合は、取引価格も高額になるため、手が出しにくいというデメリットがあるのも事実です。
確かに高層階は眺望が良く、部屋からの眺めに対して、価値を感じる方なら良いものの、生活を営む点では不便を感じることもあるようです。
実際に住んでみて、高層階から低層階に引っ越したという方もいれば、ファミリー層など長期的に住むような方々は、低層階に魅力を感じるようです。
実際に、窓を開けることができ、外に洗濯物を干せるなど、20階以下の低層階には、実用面での評価は高いです。場合によって、低階層の方が高く設定されていることもあります。
不動産投資を行う上で、できる限り空室を避けることが安定したインカムゲインを得ていくために重要なポイントです。超富裕層をターゲットにした最上階や、年収2,000万円以上をターゲットにした高層階より、家賃相場の低い低層階の方が住める方は多いです。
また低層階の方が実売価格も安く、表面利回りも5%程度(実売価格5,000万円、月額賃料21万円で計算)と高くなります。
実用面を考慮して、低層階に投資をするというのも十分に考えられます。
まとめ
タワーマンション投資を行う際に気になるポイントのひとつとして、低層階と高層階の不公平感による税制改正です。高層階の方が、固定資産税評価額が上がったものの低層階との差はそれほど大きくなく、相続税対策としても十分に活用できるといえます。
階層が上がるごとの固定資産税評価額の補正率は、1階上がるごとに約0.256を足していくことです。つまり、1階と30階だったとしても、約7.5%の差しかつきません。実際の取引価格を考慮すると、まだ小さいと言えます。
税金面のことも踏まえながら、タワーマンション投資を戦略的に行っていくならば、活用できる投資案件になるでしょう。