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【消費税対策】キャッシュレス決済は今後普及していくのか?

世界各国のキャッシュレス化の割合をみると、日本はキャッシュレス決済が遅れている国の一つです。2019年の消費税引き上げ後の景気対策として、ポイント還元を、キャッシュレス決済を行なった場合に付与する案が出ているのも、大元は日本のキャッシュレス決済の割合を高くしたいからです。この記事では景気対策としてのキャッシュレス決済の展開やキャッシュレス決済のメリットやデメリットなどについて説明していきます。

201910月消費税の引き上げ後の景気はどうなる?

2018年10月に、安倍首相が2019年10月に消費税を10%に引き上げることを表明しました。10月の消費税引き上げはほぼ確定したといっていいでしょう。経済状況によっては再延期もありえますが、財政健全化も待ったなしの問題ですので、引き上げの方向で考えておいた方がよいでしょう。引き上げ後の景気については様々な意見が出ています。経済に大きな影響はないという人たちは国内の景気動向は上向きを保っていること、消費税の上げ幅が2014年の8%への引き上げに比べて小さいことを根拠に挙げています。また、安倍政権が「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ばさないよう全力で対応する」と様々な景気刺激策を検討していることも指摘しています。

これに対して、経済に影響が出るという人たちは、消費税引き上げ直後は必ず景気の落ち込みがあること、世界経済の動向が不安定であること、特にアメリカや中国といった景気の牽引役を担ってきた国々の景気が減速する可能性が高いことを根拠に挙げています。また、米中の貿易摩擦や北朝鮮問題など国際情勢の不透明さも指摘しています。2019年1月時点では、景気が落ち込む可能性を指摘する声が多いようですが、2019年10月になってみなければわからないというのが正直なところではないでしょうか。

【景気対策】キャッシュレス決済の今後の展開

消費税引き上げ後の景気対策の1つに挙がっているのが、中小規模の商店などにおけるキャッシュレス決済に対するポイント還元です。5%の還元を予定しており、今後のキャッシュレス決済の広がりへの布石にもしたいという考えが背景にあります。そもそもなぜキャッシュレス決済を広めたいかというと、大きく3つの理由があります。

1つ目は現金決済による労働コストの削減です。キャッシュレス決済は基本的にデジタル化されている部分が多いので労働コストは小さいですが、現金決済は人手によるため労働コストが大きく、労働力が減少していく日本ではできるだけ省きたいという政府の思惑があります。

2つ目は外国人観光客への利便性の提供のためです。ドイツをのぞき、先進国のほとんどはキャッシュレス決済の比率が4割を越えています。ところが日本では2割以下に留まっているため、特に小規模店舗ではキャッシュレス決済に対応していない店が多いのです。外国人観光客はキャッシュレス決済ができないと現金を持ち歩かないといけなくなるため、不満が出てきています。

3つ目は新しいビジネスの創出です。スマートフォンという携帯コンピューターといえる機器の普及で、キャッシュレス決済を実現する方法は格段に増えました。

買い物は人間にとって当たり前の行為ですから、使いやすいキャッシュレス決済システムを開発して、広く使われるようになれば大きなビジネスになります。

このように、キャッシュレス決済を普及させることは国や行政、システム開発企業やベンチャー企業にとってはメリットが大きいですが、個人や小規模店舗にとってはそれほどメリットがありません。今回の消費税対策にしても、中小店舗はまずシステムの導入費用を投資しなければなりません。確かに外国人観光客による収入は観光地を潤しているでしょうが、観光地以外の商店には縁のない話です。

ポイント還元も9ヶ月ぐらいの期間といわれているので、景気対策でキャッシュレス決済を導入しようという動機付けは小さいのではないでしょうか。消費者は5%も還元されれば嬉しいでしょうが、そのために小規模商店に買い物に行くかというと、郊外型の大型店舗の方が利便性がよいですし、大型店はポイント還元で客離れが起きないよう対策を打つはずなので、還元がなくても小規模商店とそれほど値段がかわらず、そのまま大型店舗に行くという可能性もあります。

今回の景気対策だけでは、観光地などは外国人観光客対応にもなるのである程度普及が広がると考えられますが、全国的な普及は難しいのではないでしょうか。キャッシュレス決済を普及させるためには、現在必要性を感じていない個人や店舗にもメリットを感じさせる必要があります。

キャッシュレス化によるメリットとデメリット

キャッシュレス化によるメリットは大きく4つあります。

1つ目は現金決済の手間やミスがなくなることです。お財布ケータイのようなシステムであれば、合計金額が自動的に引かれるので、操作ミスなどもありません。かなりの労力を省くことができます。

2つ目はお金の流れが透明化されることです。必ずシステムを通した決済になるので記録が残ります。個人や企業は、電子的な家計簿や帳簿と連動できますし、税務署などが税務調査するときにも漏れが少なくなります。

3つ目は犯罪の抑止効果です。まず現金が使われなくなるので偽札の犯罪がなくなります。

また、先に述べたお金の流れの透明化によって、脱税やマネーロンダリングなどお金に絡んだ犯罪が起こりにくくなります。そして、現金を持ち歩かなくなるので強盗などの犯罪が減ります。キャッシュレス化98%というスウェーデンでは強盗犯罪が400分の1に減ったといわれています。

4つ目は貨幣や紙幣を作る資源や労力を削減できます。完全に現金をなくすことはできませんが、キャッシュレス化が進めば現金の流通量が減るので、作る量を減らすことができます。特に高額紙幣は犯罪に使われやすいお金ですし、1円玉のような少額貨幣は作るのに1円以上のコストがかかるので、犯罪減少やコストの節約に役立ちます。

デメリットは3つあります。

1つ目は決済システムが止まると何も買えなくなることです。特に問題になるのは、災害時に決済システムが止まり、物が買えなくなることです。最近日本では大きな自然災害がいくつも起こり、被災した人の中には手持ちの現金で当座の食料を買うといったことがあったでしょう。キャッシュレス化が進むとこのような場合は困ります。防災関連で国や自治体が何か検討する必要があります。また、決済システムで主要な役割を果たすスマートフォンの電池切れが今までより大きな問題になります。予備のバッテリーを持つなど備えが必要になるでしょう。

2つ目は企業や店舗にシステム化の投資が必要になることです。現在はキャッシュレス決済のシステムが統一化されているわけではないので、利便性を高めるためには店舗は複数のシステム用機器を導入しなければなりません。中小規模のお店だと設備投資の額が大きくて導入できない可能性もあります。

3つ目はキャッシュレス決済を使えない人がいるということです。実際スウェーデンでは「現金難民」と呼ばれるキャッシュレス化に対応できない高齢者が社会問題になっています。日本でも高齢者は新しいシステムに慣れることができず、現金を使い続ける人もいるのではないかと予想されます。

【まとめ】キャッシュレス決済は今後導入されていくがペースは不明

日本でキャッシュレス化が進まないのは、クレジットカードの普及が中々進まず、普及しても利用者の割合が少ないという状況が示しているように、高齢者を中心に現金主義の人が多いという現実があります。キャッシュレス決済へのインセンティブを設けても、現金へのこだわりをなくすことは簡単にはいかないと考えられます。世界的な動きからいえばキャッシュレス決済が広がった方がメリットは大きいと予想されますが、特にメリットを感じていない人が使いやすいように検討しないと、すぐには普及が進まないと考えられます。