妊娠してから病院にかかると、知らない間に妊婦加算を上乗せされていました。これについて医師から妊婦ですので加算します、と言われることはありません。そのため、妊婦になったら加算される事実を知らない人は多かったでしょう。この事実を知った妊婦から不満の声が上がったのです。ここでは妊婦加算について、解説していきます。
妊婦加算とは〜ツイッターで広まる「事実上の妊婦税」の批判〜
妊婦加算は妊娠していると、医療費に規定の料金が追加される制度です。妊娠していなければ加算されないので、妊婦税と批判されることになりました。
ツイッターで広まった背景としては、この妊婦加算について周知が徹底されていなかったことに原因があります。妊婦からすれば、知らない間に医療費が上乗せされていたと感じたのです。その妊婦加算についてほとんどの人が知らなかったために、ツイッターで疑問が広がっていきました。妊婦加算が導入されていたことを知った人がツイッターで拡散したのですが、今度は妊婦加算に対する疑問が生まれたのです。妊婦加算は事実上の妊婦税と考える人が多かったからです。
妊婦が医療機関を受けるときだけ加算されるのでは、妊婦だけを特別扱いしていると思われても仕方ありません。ただ、ツイッターでは妊婦が高い医療費を払うという部分だけを、切り取って広がりました。そのため、妊婦に同情が集まったのです。妊婦加算を導入した背景などは考慮されずに、経済的負担を妊婦だけに強いるのはかわいそうだという意見が共感を呼びました。この意見と共に、政府は出産率を上げることを目標としているのに、妊婦の負担を増やしていると批判を受けたのです。料金のことだけを考えれば、妊婦加算は妊婦の経済的負担を増やすことになります。その注目はやがて国会を動かすほどに大きくなっていました。政府を批判する材料になったのです。結局国会でも与野党から批判が上がり、妊婦加算は凍結されます。妊婦加算をめぐる批判はツイッターから国会へと飛び火して、国民を巻き込んだものになりました。
ここまで大きくなったのは、いつの間にか始まっていたことが原因です。これが国会で集中的に審議をされて、国民に広く伝えられていたら騒動が起きることはなかったかもしれません。誰にも知られていない妊婦加算という負担を、妊婦に強いたことが問題だったのです。
そもそも、なぜ「妊婦加算」が制定されたのか?
妊婦が医療機関で診察を受けるときには、お腹の子供への配慮が必要です。そのため、医師は一般人よりも特別な気配りが求められます。ただ、医師の対応は個人によってバラバラなケースが多いです。妊婦のために親身になって診察する人もいれば、産婦人科の受診をすすめる医師もいたのです。妊婦という理由で薬の処方を断る医師もいました。そのような環境だったために、妊婦は医療機関をいつでも安心して受けられる状況ではありませんでした。そう考えると、妊婦が行ける医療機関は限られていたのです。医師が妊婦に対して理解を持っていることが、医療機関を選ぶポイントになっていました。そんな状況を変えるために、妊婦加算を導入したのです。これは妊婦の診察を積極的に受け入れることを目的としていました。妊婦に対して丁寧に対応することを、妊婦加算という形で評価をすれば、医師のモチベーションが上がると考えた結果の方策でした。
医師からは丁寧な診察や妊婦が飲める薬を調べることなどを考慮すれば、加算に対して前向きな意見が多いでしょう。一般人と同じように診察できないのですから、妊婦加算は理解できるのです。一方で、妊婦側は背景を理解して、負担が大きくなることを受け入れるという意見の人もいます。医療機関で丁寧な診察を受けられるなら、負担が増えてもいいと考えているのです。
背景がしっかりと見えてくると、妊婦加算の問題は増税とは言いきれない側面があります。医師の負担を増やしているのは確かですし、医師は同じ診療費であれば妊婦以外を診察したいと考えてしまうでしょう。丁寧に配慮して診察する必要のある妊婦は手間がかかってしまうのです。妊婦加算があれば、丁寧に診察をした見返りがあることになります。そう考えていくと、妊婦加算は結果として、妊婦にとっても利益があるものになるでしょう。安心して各医療機関を受診するための必要経費と考えれば、高くはないかもしれません。ただし、この妊婦加算は上手く機能させる必要があります。関係のない医療機関も制度を利用することができるのです。
例えば、コンタクトレンズを作成するときに、医療費として妊婦加算を請求することができます。これは妊婦加算の意図とは異なる利用の仕方です。妊婦が安心して丁寧な診療を受けるために導入されたものですので、それに沿った使い方をすることが大切になります。できないのであれば、妊婦加算の制度が上手く活用されることはないでしょう。
「妊婦加算」今後の見直しに注目!
妊婦加算は平成31年1月1日から一旦凍結されました。妊婦加算が凍結されて、妊娠を理由に多くお金を払う必要がなくなったのか、妊婦を取り巻く医療環境の改善が先送りになったのかについて結論はなかなか出ないでしょう。しかし、凍結している間は妊婦を取り巻く環境が、変わらないことは決まりました。当事者である妊婦としては、お金の負担が増えることは重要ですが、安心して診療を受けられることも大事なのです。妊婦を取り巻く環境を変えていくことは、妊婦加算の見直しの中でも重要なポイントになるでしょう。そんな見直しのポイントになるのは、診療報酬アップ以外で、医師の対応を変える方法です。医師の対応を変える方法が見つかれば、政策として推進していくと前に進めます。それには医師からの意見などを集約する必要があるでしょう。アンケートなどを取ることで、何が問題なのかが見えてきます。医師は妊婦を軽視している訳ではありません。丁寧に診療できない理由があるのです。その理由は現場の医師が持っていて、それを解決することが大事になります。それができると前に進むことできるでしょう。
他に、見直しのポイントになるのは、妊婦加算の料金設定です。医療費が急激に上がったことで、妊婦加算に気づいた人は多かったです。凍結された妊婦加算は大きく加算されていたのです。これが少しだけの加算であれば、そこまで大きな問題にはならなかったかもしれません。料金をどの程度高くするのか、または負担を増やさないのかもポイントの一つです。さらに別のポイントは、周知徹底をどの程度行うかです。凍結された妊婦加算で問題となった周知不足は、改善する余地があります。理解してもらうためにも、見直した妊婦加算を国民が理解できるように周知する必要があるでしょう。当事者である妊婦が知らないことは論外ですが、妊婦を支える家族にも知ってもらうことが大事です。負担が増える場合は特に理解を得るための周知は大切になります。周知が上手くいけば負担が増えたとしても、妊婦の理解を得られる可能性は高いです。妊婦を取り巻く医療環境に、不満を持っているのは妊婦だからです。当事者の理解を得られれば、当事者以外は納得しやすいでしょう。
まとめ
妊婦加算とは妊婦が医療機関を受診したときに、料金が一般の人より高くなる制度です。あまり知られていなかったので、ツイッターで批判が集まったのです。もともとは医師が妊婦を丁寧に診察できるように、導入された制度でした。しかし、理解が得られず凍結されました。これによって妊婦を取り巻く医療環境は変わらなかったのです。
今後は見直しをして、妊婦が安心して医療機関を受診できる制度になるでしょう。そのために、活発な議論をして、色々な意見を取り入れて制度化することが大事です