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高齢化で顕在化しつつある不動産投資で発生しがちなトラブル

超高齢化社会に突入した日本では、入居者の高齢化も避けては通れません。それにより入居者の孤独死というトラブルが発生する可能性が高くなっている現状があります。ここでは不動産業界における高齢化によるトラブル、保有物件で孤独死が発生したらどうしたらよいか、孤独死を防ぐためにはどのような対策が取れるのかの大きく3つに焦点を絞り、不動産投資が抱える高齢化によるトラブルを解説します。

大家さんにとって独居老人の孤独死のリスクが急増中

不動産投資をする上でトラブルは数多く存在します。入居者とのトラブルだけでなく、業者とのトラブル、他にも自然災害など避けようがないトラブルもあります。その中でも、現在の日本の状況から問題となり始めているのが入居者の高齢化です。少子高齢化が進み、現在の日本が抱えている人口の高齢化という問題は社会に大きな影響を与えています。不動産業界でも継続して入居している人々は年齢を重ねて高齢者に突入していきますし、今後新たな入居者が入ってくるとしても高齢者であることが多くなると考えられます。

高齢者が入居した場合、何が問題となるのでしょうか。それは独居老人と呼ばれる1人で暮らしている高齢者の存在です。内閣府が平成28年に発表した高齢者の経済・生活環境に関する調査結果によると、一人暮らしをしている高齢者の割合は65歳以上の高齢者のうち14.8%になります。この割合は年々増加しており、独居老人の人口はさらに増加していくと見込まれています。

配偶者の死亡や離婚、未婚により一人暮らしをする高齢者はいついかなる時も誰かに見守られているわけではありません。そこで問題になるのが、高齢者が一人で家の中にいるときに倒れてしまったら誰が助けてくれるのかという点です。ただでさえ身体的にも能力が下がり、持病を持つことも多い高齢者です。若い人に比べても、倒れるリスクは格段に高いです。助けを呼ぶことも出来ず動けない高齢者はそのまま息を引き取る可能性が高いでしょう。このように一人暮らしの人が誰にも看取られずに亡くなることを孤独死と言います。

さらに最近の独居老人の特徴として、近くに住んでいる子供も周囲に友人や顔見知りもいない、社会から孤立している高齢者が増加しているという点があります。何か不安があった時にも頼れる人がおらず、数日家から出てこなくても誰も不審に思わない、そんな高齢者が増加しているのです。現在は未婚率も増加しており、結婚適齢期に結婚している人口は約50%に留まります。今後、高齢者となる人々も孤独な独居老人となる可能性を秘めている現状があるのです。

都内だけでも、高齢者の孤独死は年間3,000人を超えています。この人数は自宅での事故死、病死だけの人数なので、自殺によるものを含めると自宅での高齢者の死亡者数はさらに多くなります。そして、周囲に知り合いがいない高齢者の孤独死の場合、発見が遅くなる可能性があります。都内の高齢者の孤独死のうち、100人以上が死後1週間以上経ってから発見されたという統計もあるほどです。孤独死は決して遠い話ではない現状が見えてきます。

実際に保有物件で住人が亡くなるとどうなる?

保有物件で住人が亡くなった場合、どのように対応すべきでしょうか。時系列に対応を見ていきましょう。

最初は、近所の知り合いや離れて暮らす家族から本人と連絡が取れなくなったと連絡が来るところから始まったり、死後数日経っていれば周囲の部屋の住人から異臭や虫が発生しているといった苦情の形で連絡が入る場合もあります。そのような連絡があれば、室内を調べなくてはいけませんが、このときに注意すべきは室内には勝手に入らないということです。物件の保有者と言えども、住居侵入罪に問われてしまう危険性があるからです。連絡の取れる親族やそれが難しければ警察に連絡してから室内を確認するようにしましょう。

親族または警察とともに室内を確認した場合、亡くなった住人の遺体を発見するケースもあります。自然死の可能性もありますが、他殺や自殺などの可能性もあるので遺体の発見後は勝手に室内を調べまわったりせず、警察に確認してもらうようにしましょう。遺体の身元確認が取れたら、室内の片づけが可能になります。発見までに時間がかかった場合は腐敗臭が発生していたり、床にシミや汚れがついている場合もあります。そのような時には特殊な薬剤などを使って室内を綺麗にする特殊清掃と呼ばれるものを行います。これは専門の業者に依頼する方が確実ですから、必要に応じて調べた方が良いでしょう。

片づけや業者の費用を含めて、親族や保証人と原状回復費用や損害賠償費用の話し合いを行います。損害賠償は自殺の場合は請求できる可能性がありますが、自然死の場合は難しいと考えられます。しかし、部屋の原状回復費用は基本的には請求できるはずです。親族との話し合いが終了し、室内の清掃も完了すれば住民が亡くなったという問題は解決します。しかし、実際はそのあとに新たな問題が発生することがほとんどです。それは、次の入居者がなかなか決まらないという問題です。

自殺や他殺の場合は告知事項ありと賃貸物件情報欄に記載しなくてはいけません。自然死の場合は記載しなくても良いのですが、現在は事故物件を扱うサイトがあるくらいですから、どこからか情報が洩れてしまうことがあります。そうなると、余計に次の入居者は決まりません。やはり、人が亡くなったという部屋はいくら綺麗にしていてもなかなか住もうとは思えないでしょう。そのため、賃貸料を下げるなどして入居者が入りやすい状況にするなどの対策を取ることになるのですが、それでもなかなか決まらないこともあります。結果不動産収入は減ってしまい、不動産投資が成り立たなくなってしまう可能性が出てくるのです。

被害を抑えるための対策の方法

孤独死の危険性があるから1人暮らしを希望する高齢者の入居は断るという方針は、今後の日本の更なる高齢化を考えると現実的ではありません。それでは、孤独死による被害を抑えるためにはどのような対応を取るべきでしょうか。1つの方法としては、独居老人に見守りサービスを利用してもらうことです。高齢化の進む日本にとって、高齢者の孤独死は社会問題でもあります。そのため、行政が見守りサービスを行っている地域も出てきています。

行政によってサービスの内容は様々です。職員やボランティアが定期的に独居老人の家庭を訪問するサービスを提供していたり、地域で見守りの目を強化し、独居老人の状況を地域ごとに確認し合うところもあります。他にも電気やガスなどライフラインを提供している業者と提携し、何か異変があったらすぐに行政に連絡が来るように協定を結んでいるところもあるようです。様々な種類の行政サービスが展開されているので、保有物件の地域ではどのようなサービスが行われているか一度確認してみるのも良いでしょう。

あるいは有料になりますが、民間会社によるサービスを利用する方法もあります。例えば、直接家庭には訪れずに電気使用料などをモニターし、高齢者が生活を送っているか見守るサービスがあります。また、郵便局では郵便物の配達に合わせて高齢者の状態を確認し、遠方の親類に連絡をするというサービスを行っています。

他にできる対策として、人感センサーの設置もあります。入居者の同意が得られれば、玄関あたりに設置すれば扉が開いたかどうかを確認でき、部屋に設置すれば室内で人が動いているかの確認ができるようになります。一定時間誰も動いた気配がなければ、室内で倒れている可能性があると気付くことができるでしょう。

【まとめ】孤独死によるリスクは、事前の対策で軽減することができる!


室内で孤独死が発生した場合、発見が遅れると室内は悲惨なことになります。しかし、そのような事態を恐れ、高齢化が進む日本で高齢者の入居を拒むのは難しいのも事実です。それよりもどのようにして保有物件内での孤独死を防ぐかを考え、発生してもすぐに発見できるようなシステムを利用することで発見を早めることができます。行政のサービスなども上手く活用し、安心して部屋を貸すことができる環境を整える必要があるでしょう。