不景気などを理由に先行きが見えない日本。将来のことを考えたときに不労収入が得られる方法として不動産投資に人気が集まっています。不動産は比較的値崩れしにくく、お金の価値が下がっても不動産の価格は下がりにくいとされているからです。そこで、不動産投資が加熱している背景やブームによって浮上した問題点について解説します。
不動産投資が盛り上がった社会的背景
不動産投資が盛り上がった社会的背景にはオリンピックの影響、将来の年金への不安や相続対策などがあります。まず、2020年の東京オリンピックの開催を控え、不動産に着目する人が増加しているのが盛り上がった要因の一つです。東京オリンピックの開催自体はもちろんのことですが、それに合わせたインフラの整備や新規の建物などオリンピック開催では不動産の価値を高める要因が沢山あります。特に湾岸エリアでは選手村やタワーマンションの建設が進んでいて、鉄道関係や道路の設備なども行われ、投資家だけでなくそのエリアに住みたいという希望者も増えます。投資家たちにとっては東京オリンピックという世界的なイベントを控え、将来的に土地や建物の値上がりを見込んで早めに購入するという思惑があるのです。海外の投資家も日本の技術などに信頼を寄せていて、日本の不動産市場に参入しています。国内外の投資家が東京オリンピックに伴う不動産の値上がりに注目することで、不動産投資が過熱していると考えられるのです。
また、年金への不安では少子高齢化社会である日本で公的年金だけで老後を生き抜くことが出来ないと判断した人が多くなったため、不動産投資に注目が集まっています。現代の日本で老後にゆとりがある生活を送るためには、毎月約35万円の生活費が必要と言われています。それに対して一般的なサラリーマン世帯の年金は約23万円と言われており、その差額の金額は自分たちでどうにかしなければならないという状況があります。さらにサラリーマンの平均的な退職年齢は60歳に対して、年金が受給されるのは65歳です。仮に60歳で退職することになったとしても、65歳までの5年間の生活費は自分自身で負担する必要があるのです。25歳から60歳までに老後資金を貯めていたとしても、毎月12万円貯金しなければならない計算になります。そこで注目されたのが、不動産投資です。融資を活用することが出来れば頭金なしで始められるケースもあり、老後資金を貯める方法の一つとして注目を集めています。
不動産投資が盛り上がっている背景には、相続税対策もあります。団塊世代が高齢者になる時代に突入し、数千万円以上の現金や金融資産を所有している人が相続税対策として不動産投資を活用しています。税制改正によって相続税の改正も行われ、基礎控除3,000万円+相続人数×600万円と税率が上がっています。そのため、退職金や保険金などを加えてしまうと相続税の控除額を超えてしまう可能性があるのです。そこでより多くの控除が受けられる不動産を購入し、相続税を安く抑える狙いがあります。節税のニーズが増えたことも、不動産投資が盛り上がった背景の一つと言えるでしょう。
年収300万円でも投資できる異常な環境ができた経緯
年収300万円の人でも投資することが出来る環境になったのは、政府が行っている金融緩和があったからだと考えられています。1980年代のバブル崩壊後、日本国内の金利は低下傾向にあります。これは日銀が積極的な金融緩和をしているからで、それに伴って住宅ローンも金利が低下しているのです。2013年からは異次元の金融緩和が行われ、2016年にはマイナス金利政策まで導入されています。
マイナス金利という政策は、金融機関が銀行の銀行とされている日銀が持っている当座預金のうち、今後積み上がる予定の残高部分に対してマイナス0.1パーセントの金利を課す政策です。マイナスということは、預ければ預けるほど金利でお金が取られるということになります。大胆な金融緩和を行うことで景気に刺激を与え、企業の収益がアップします。その利益が従業員に回され、賃上げに繋がって消費に回ることでデフレから脱却したいという考えです。日銀のマイナス金利政策が2016年2月16日にスタートし、導入が発表された1月には銀行の株価が下がり、それに従って不動産関係の株価が上がるという現象が起きました。金融緩和が行われたことで、様々な企業や個人が市場で増加した資金をどのようにビジネスに活かすのかを考え始めたのです。特に金融機関は住宅やオフィスビルの不動産は需要が高く、底堅いことから融資をすればある程度儲けられると考えます。マイナス金利を支払うくらいなら貸し倒れのリスクはあるにしても、少しでも利益が見込める不動産融資の割合を増加させる方向へとシフトしたのです。
政策が行われたことや金融機関の不動産融資の割合が増加したことで住宅ローンの金利が下がり、年収300万円の人でも投資しやすくなって住宅市場が盛り上がったという経緯があります。今までハードルが高かった住宅ローンを収入が少なくても組むことができ、より身近な存在となったことで投資家以外にも不動産投資が広まりました。そして、金利が低いということは金利が高かった頃と比べて、返済総額が少なくて済むというメリットがあります。低金利で借り入れができ、返済総額が少ないという状況によって収入が300万円でも不動産投資に参入しやすくなったのです。
スルガ銀行やかぼちゃの馬車だけの問題ではない
不動産投資が盛り上がる中でシャアハウス「かぼちゃの馬車」問題が発生し、不動産投資に様々な影響を与えています。この問題はスマートデイズという企業が「かぼちゃの馬車」というブランド名のシャアハウスを建設し、投資家に販売していた事件です。購入した投資家に対してスマートデイズが借り上げを行い、賃料を支払うというシステムでした。融資を行っていたのがスルガ銀行で、投資家の資産の水増しなどの不正行為をスマートデイズだけでなく、スルガ銀行も一緒に行っていたことが発覚しています。かぼちゃの馬車の家賃はとても高く設定されていて、中々入居者が集まらない状況が続き、スマートデイズはついに破綻まで追い込まれます。企業が破綻してしまったため、投資家には入居者がほとんど居ない物件とローンだけが残されてしまいました。ローンを支払いたくても家賃収入がなく、オーナー側も破綻の危機に直面したという問題です。
この問題を受けて金融庁はマンションやアパート、シェアハウスの実態調査を決定し、投資用不動産などを調べることになりました。この調査を行うことによって融資がきちんと行われているのか、管理体制は整っているのかを調査します。調査が行われることで今後起こると予想されるのは、ローンの審査が厳しくなることです。ローンの審査が厳しくなれば不動産投資のハードルが上がり、購入者が減ってしまうので物件の価格は下落します。価格が下落することで地価も下がり、所有している建物の価値が下がってしまう可能性があります。投資用の物件の価値が下がってしまうと家賃も低く設定する必要が出てくるので、収入面でも問題が出て来ます。物件を売ることになったとしても、下落した価格に合わせて値段を下げざるを得なくなるでしょう。スルガ銀行やスマートデイズの不正により、結果的に金融庁を動かす事態となりました。それに伴って様々な問題が噴出し、これからも不動産投資に影響を与える可能性が指摘されています。
【まとめ】不動産投資は不動産で利益を上げられるように
日本国内の不動産投資は土地や建物を所有している資産家が行っているものでしたが、徐々に土地を所有していない人たちも参加するようになってきました。不動産投資を行うときには安易に始めるのではなく、リスクも理解して行うことが何よりも大事です。投資する不動産はどのようなビジネスにするのか、どのような仕組みで利益を上げるのか客観的に判断してビジネスをしていくことも重要です。