今の時代は、お金に対する価値観が代わり「信用経済」に拍車がかかっています。信用を多く積み重ねることが、結果的にお金を増やしていくことに繋がってきています。
昔は、学校の通信簿や学歴、上場企業や一流企業に勤めている事が信頼を担保することになり、銀行からの融資も下りやすい状況でした。もちろん今でも、不動産などを購入する場合のローンは組めますが、担保がない場合の資金調達は変わるでしょう。
信用経済という価値観により、一部の仕組みではお金を集めるための成功法則が変わり、多くの方に信頼されることで個人から出資してもらえるようになっています。例えば、クラウドファウンディングなどの仕組みは、まさに信用経済を代表する資金調達法と言えます。
しかし、信用というものを何で測定するのかは難しく、本人の行動やライフスタイルによって変化します。目に見えないスコアを数値化することに成功すれば、その本人の事を知らなくても信用に繋がります。
実は、人工知能の発達により、信用を数値化する試みが始まっています。みずほ銀行とソフトバンクが共同で創設したフィンテック企業「株式会社J.Score」が展開する「AIスコア」が、個人の信用力をスコア化しています。
本記事では、信用を数値化することでどのように変化するのか。数値化されている「AIスコア」について、そして信用を積み重ねていくためにはどういった努力が必要なのかを考察していきます。
【信用経済】信用がお金を生み出す時代
「信用経済」という言葉が認知されはじめて、世の中のルールも少しずつ変わってきています。特にお金に関する価値観は変わり、たとえこれまでの実績がなかったとしても、信用を積み重ねていけば、自身がやりたいことに対して出資をする人も出てきます。
そして、お金の額が幸せの尺度でもなくなってきています。
信用に関して、面白い話があります。
数多くの方に認知されている芸能人が、クラウドファウンディングを通じた資金調達に失敗し、無名だけれど特定少数の方へ絶大なる人気を誇る方が、資金調達に成功しています。
一見、人気のある芸能人が資金調達に成功すると思いがちですが、広告主がスポンサーである芸能人は、人前でいい顔をしているという事が見抜かれてしまい、個人でやりたいことがあったとしても、しらけられやすいようです。
その結果、資金調達に失敗するのです。無名でも一部の人に誠実さが理解してもらえたら、資金調達には成功するのです。
クラウドファウンディングは、プロジェクトの秀逸さや、出資に対するリターンなどによって、成功しやすいという意見がありました。しかし、実はそうではなく、自分のプロジェクトに対して、出資してもらう方との信頼関係・信用関係こそが重要で、それを日常レベルで積み重ねていった人がお金を獲得しています。
嘘で塗り固められた人は、どんどん信用を失い、正直者は成功していく時代とも言えます。
数値化された信用を考えてみる
クラウドファウンディングを例に見てみると、プロジェクトの成否が信用の数値化とも言えます。
しかし、プロジェクトが成功していたとしても信用があったから成功したとは限りません。もしかしたら、そのプロジェクトの企画が良くて、成立した可能性もあります。
そのため、初見で見るのではなく、継続的にクラウドファウンディングでお金を集めている人を見てみると、信用の数値化という点で精度が上がったと言えるでしょう。
2回目、3回目はプロジェクトの内容が良いのではなく、その人だったらそのプロジェクトを完遂させるという信用を得ているからです。
リターンのない寄付型クラウドファウンディングを通じて、どれだけお金を集められるかが、信用を数値化した時の高さと言えるでしょう。
定性的評価を数値化し客観的な信用を知る
信用を数値化する場合、定量的ではなく、定性的に測る必要があります。定性的とは数値化できないもので、主観的な要素が入ってきます。
例えば、努力や夢、情熱というように、目に見えないものがそれにあたります。スタートアップ企業に出資するエンジェル投資家は、事業内容はもちろんのこと、起業家のビジョンやミッションに対して、お金を投資します。
これは、エンジェル投資家が、起業家のことを定性的に測定し、数値化していると言えます。この場合は、エンジェル投資家の尺度となりますが、定性的評価を数値化することができれば、信用を得ることに繋がります。
個人が主観的に信用評価をするのではなく、株式会社J.Scoreが提供する「AIスコア」をはじめ、人工知能による個人の数値化は、誰もがわかりやすく定性的評価を得て、積み重ねる事に繋がるのです。
J.Scoreのサービス「AIスコア」の紹介と課題
定性的評価を数値化することで、新しく立ち上がったフィンテック企業があります。みずほ銀行とソフトバンクによって設立された株式会社J.Scoreが提供するサービス「AIスコア」と「AIスコア・レンディング」は、個人の信用力を可視化できるアプリです。
無料で始める事ができ、用意されている設問に回答し、ベースとなるスコアを割り出しましょう。普段の行動パターンや現在の借り入れ、所有する資産などから、スコアを計算していると推測できます。
また、みずほ銀行やソフトバンクとの情報連携し、取引情報や数々のパーソナルデータを提供すれば、スコアを上昇させていく事が可能です。
スマートフォン用アプリも提供されているため、普段の生活をリアルタイムで反映し、人工知能が数値化をすることで、自分自身のスコアも変動していくでしょう。
また現在のスコアから、自身がどれくらいの融資を受けられるか算出されています。スコア・レンディングというサービスで、これまでの与信調査とは異なる適正条件を出してくれます。
参考として、スコアが819の場合、300万円までの融資が可能で、貸付金利は6.4%と公式ホームページの画像から確認できます。またデモを使用し、用意されている設問に回答したらスコアが622と算出され、この場合は、80万円を上限とし貸付金利が12.0%と表示されました。
高得点であればあるほど、有利な融資条件になっていくでしょう。
AIスコアを利用しての所感になりますが、数値化する際に、個人の行動パターンに関する設問はありますが、夢やビジョン、情熱、やっていることに対しての熱量などの問いはなく、反映されていません。
主観的に見て、銀行がお金を貸したい方をベースに作られている可能性があります。エンジェル投資家など個人が独自に持っている定性的評価に近づけていくためには課題はたくさんあると感じます。
個人を数値化することはとても斬新なサービスと言えるため、精度がどんどん上がっていくと更に面白いでしょう。また、利用する方としてもスコアを上げていくために努力をします。自己実現のために努力や成長していく文化は、社会全体を良くしていくことに繋がり、個人への出資が増えていくと考えられます。
自己投資を含め、投資が加速していく世の中になっていくでしょう。
【J.Score/AIスコア・レンディング】
https://www.jscore.co.jp
まとめ
用経済という新たな尺度で、個人を測定する事ができるようになってきました。人工知能とビックデータ。そして個人のパーソナルデータや行動パターン、そして現在所有する資産などから数値化するサービスも誕生しています。
人工知能で客観的に数値化する事もあれば、クラウドファウンディングというシステム自体が信用経済をベースにしており、プロジェクトに対して信用ある人にお金が流れ込みます。
AIによる数値化にしても、クラウドファウンディングにおけるプロジェクト成立においても、断片的に見るのではなく、トータルで判断する必要があります。
今、行っている事(習慣)が未来に繋がっているため、その繰り返しが将来に反映されます。信用経済のルールで勝っていくためには、普段からの信用の積み重ねが大切になり、明確なビジョンを持ち、それに向かって必要な事をコツコツ積み上げていく人が信用経済でも勝っていくでしょう。