うんちくで楽しむ、高級ワインの世界。
いろいろなお酒がありますが、やはりはずせないのがワイン。なんといってもお洒落ですし、味の幅が広くどんな料理にも合うものがあるのが強みです。
だから、数あるワインの中から料理に合わせて、今日の一本を選ぶのもワインの魅力。とくにワイン通ならずとも、すこしはワインのことは知っておきたいものです。
でもそれは、専門的なことを覚えようということではありません。アロマやテロワール、ブドウの種類やヴィンテージなど、難しいことはソムリエに任せましょう。
みなさんにぜひ知っていただきたいのは、高級なワインやワイナリーならかならず持っている、興味深い歴史のエピソードやそれに基づく醸造の思想です。
味や香りはもちろんですが、じつはそのワインにまつわるうんちくこそが、そのワインの魅力の根本です。
だから代表的な高級ワインに関しては、そんな興味深いうんちくを知って、楽しくワインを語りながらディナーいただく。それこそが本当のワイン通と言えるでしょう。
とっておきのワインをさらに美味しくする、そんな楽しいワインのうんちくシリーズ。第一回は注目のカリフォルニアで行きましょう。
ずらっと並ぶオークのワイン樽。とてつもなく手間をかけて醸造されたワインは、最低三年は樽で熟成されてから出荷される。写真の右手に見えるガラス張りの部屋は、ワイナリー見学者のための試飲ルーム。事前に予約すればワイナリー見学ツアーにも参加できます。
ヨーロッパの伝統と新世界の革新が融合した、ひとつの理想形
高級ワインと言えばフランスのボルドーやブルゴーニュなど、ヨーロッパものがまず思い浮かびますが、近年それらを凌ぐ人気なのがアメリカのカリフォルニアワインです。
なかでも1980年代半ば以降に人気を博した高級ワインが、オーパスワンです。
とくにバブル経済のころはある意味セレブ達の成功の証のように扱われ、一時は品薄でとんでもないお値段になりました。
いまでは値段は落ち着いていますが、それでも5万円以下で手に入れるのは困難です。
なぜ人気のカリフォルニアワインのなかでも、オーパスワンはこんなに突出した評価なのか?
もちろんこだわりのブドウ作りと製法で生み出される、その洗練された味や香りは言うまでもありませんが、その歴史と成り立ちがすごいのです。
有名なラベルのデザインは二人の創業者の肖像のイラスト。左がバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド。右がロバート・モンダヴィだ。ちなみに日本での価格は安くても一本5万円はするが、それだけのお値打ちなのはもちろん。
ワイン界の二人の巨匠の夢が出会って出来たワイン
オーパスワンのワイナリーは1978年、ヨーロッパとアメリカのワイン界を代表する二人の巨匠が出会い、創立されました。
ひとりはフィリップ・ド・ロスチャイルド男爵です。
ロスチャイルドとはアメリカ読みで、ロスチルドやロートシルトとも読みます。ロスチャイルドって、なんか聞いたことありますよね。
そうです、彼はヨーロッパ最大の銀行家にして財閥、ロスチャイルド家の宗主の一人です。そして彼は、フランスのボルドーを代表する一級シャトー、シャトー・ムートン・ロートシルトのオーナーでもあります。
そしてもうひとりは、カリフォルニア随一の名醸造家、ロバート・モンダヴィです。もともとイタリア移民だった彼は、独自の技術革新とマーケティング手法で、田舎のワインからカリフォルニアのワインを世界的レベルに押し上げた大立者です。
ワインに限りない情熱をささげる二人は出会うなり意気投合、究極のワインを目指してジョイントベンチャーを立ち上げました。
そして1980年、最初の上質なワインが出荷されます。名前はオーパスワン、音楽用語で「作品ナンバー1番」という意味です。ラベルは二人の肖像画をイラストにしたものになりました。
ヨーロッパの伝統とアメリカの革新がハイブリッドした衝撃的ともいえるその完成度で、オーパスワンは発売するなり注目を浴び、カリフォルニアだけでなく世界を代表する高級ワインの仲間入りをしました。
ヨーロッパ最大級の財閥のオーナー、フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵と、カリフォルニアのワインをヨーロッパに比肩するレベルまで育てた名醸造家、ロバート・モンダヴィ。二人の壮大なワインにかける夢が出会い、オーパスワンが生まれた。
他に類を見ないこだわりの製法が、究極のワインを生む
さて、そんなこだわりの塊のようなオーパスワンですが、どんな作り方で出来ているんでしょう。それはやはり、ヨーロッパの伝統の手法とアメリカの最新の技術革新が融合した、他では類を見ない醸造法なのです。
まずブドウ畑。オーパスワンのブドウ畑は約67haとそんなに広くありません。それは通常の5,6倍の密度でブドウが植えられているから。その方が果汁に対して果皮の比率が高い、風味とアロマの高い実が出来るからです。
厳選のカベルネソーヴィニヨンを主体にカリフォルニアの恵まれた気候の下、自然農法で育成された果実はすべて手摘みで夜間に収穫されます。
収穫された実は徹底的に良いものだけを選別されて、ロットごとに専用タンクで発酵過程に入ります。その間オーパスワンでは、絶対に果汁にポンプなどで圧力をかけません。余計な渋みを防ぎ、豊かな風味と色合いを生み出すためです。
発酵した果汁は澱をのぞき、新しいフレンチオーク樽でさらに発酵されます。約一年半。厳しい温度管理の下、何度も試飲を繰り返し発酵の完成したワインはいよいよ瓶に詰められさらに熟成されます。さらに1年半後、完成したオーパスワインはやっとリリースされるのです。
こんな手間や人件費のかかる方法で醸造するのはすべてオーパスワンのこだわりならでは。究極のワインのためなら一切手を抜かない創業者二人が残した伝統なのです。
1980年に設立されたワイナリーの館。シンメトリーな美しいデザインは、まるで二人の創業者のヴィジョンを表現しているようだ。ちなみに、国道の向かいにはR・モンダヴィの所有するワイナリーがある。まさにここはカリフォルニアワインの聖地なのだ。
うんちくを語り、ワインを愛でる。
歴史とこだわりに育まれ、そんな風に生まれたオーパスワンの珠玉の一本。ぜひ一度奮発をしてお試しください。
理想的な試飲温度は17度。飲みごろはリリースされてから8~15年のヴィンテージと言われています。2001~2009年が当たり年と言われているので、狙い目ですよ。
ボトルからデカンタージュすると、熟したブルーベリーやカシスの香り、そしてブラックチョコやエスプレッソのアロマのベースにきめの細かいタンニンがアクセントになって、得も言われぬ味と香りが楽しめます。
もちろん、上記のようなうんちくを語り合いながら飲めば、ひときわ美味しさも輝きを増すのは言うまでもありません。
※上記のワイン情報は、日本有数のワイン販売店 ㈱徳岡のご協力で制作しました。
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