不動産投資を行う際に、個人と法人どちらで行うと得をするのでしょうか。
いわば、所得税と法人税はどちらの方が安いのかと言い換えられます。よく1,000万円近くの所得があれば、法人の方が税金はお得と言われますが、具体的にどれほどの違いがあるのかも気になりますね。
個人事業主でスタートをして、ある程度の収益が確保できてきたら、法人を設立すると考えている人もいるでしょう。どのタイミングで行えば、税金面でメリットがあるのかも気になりますね。
本記事では、不動産投資における税金面について、個人と法人でどのような差があるかを解説していきます。
個人と法人の税率を考える!課税所得額が判断材料
不動産投資における、個人と法人が支払う税金を比較してみるとわかりやすいです。課税対象所得が増えていけば、その分税率も高くなります。
ひとまず、課税所得金額における税率の一覧を見ていきましょう。
▼個人の場合(所得税)
【課税所得額………税率………控除額】
・~195万円以下………5%………なし
・195万円超~330万円以下………10%………97,500円
・330万円超~695万円以下………20%………427,500円
・695万円超~900万円以下………23%………636,000円
・900万円超~1,800万円以下………33%………1,536,000円
・1,800万円超~4,000万円以下………40%………2,796,000円
・4,000万円超………45%………4,796,000円
上記は所得税のみで、上記に住民税10%も上乗せされると認識してください。
▼法人の場合
【課税所得額………税率】
・~400万円以下………約21.4%
・400万円超~800万円以下………約23.2%
・800万円超………約33.6%
※法人税率や住民税率、地方法人税率、事業税率、地方法人特別税率が合わさった数字です。
また法人の場合、上記で計算をした税金とは別に、均等割の住民税を支払う必要があります。資本金が1,000万円以下の場合は、70,000円ですが、1,000万円超~1億円以下の場合は、200,000円になるなど、会社の資本金が多くなればなるほど、さらにかかってきます。
最初のうちは7万円プラスで上乗せする必要があると思っておくと良いでしょう。
上記の税率においては、個人と法人を比較してみると900万円が分岐点となります。しかし、その他、住民税も考慮に入れると、さらに課税所得額が低くても法人化した方がメリットのように感じます。
法人にする際は、30万円程度の資金が必要ですし、様々な手続きが必要になります。税申告においても、税理士に依頼する金額なども考えると、経費が膨れ上がってしまいます。
課税所得額が低いうちは、個人で投資をするのが良いでしょう。
実際に計算してみよう!不動産事業戦略にもプラス
法人化のタイミングがいつ頃なのかは、どのような目標をもっているかによって変わってきます。とはいえ、支払う税金の額を具体的に知ってみると法人化のタイミングも変わってくるかもしれませんね。
参考として、実際に払う税金を計算してみます。前提条件として、不動産を専業に行っており、他からの収入はないものとして考えます。
【課税所得額が900万円の場合】
▼個人で申告した場合
900万円×33%(所得税+住民税)-636,000円(控除額)=2,334,000円
▼法人で申告した場合
900万円×33.6%(税率)=3,024,000円
▼個人と法人の差
690,000円(法人>個人)
【課税所得額が1500万円の場合】
▼個人で申告した場合
1,500万円×43%(所得税+住民税)-1,536,000円(控除額)=4,914,000円
▼法人で申告した場合
1,500万円×33.6%(税率)=5,040,000円
▼個人と法人の差
126,000円(法人>個人)
【課税所得額が400万円の場合】
▼個人で申告した場合
400万円×30%(所得税+住民税)-427,500円(控除額)=722,500円
▼法人で申告した場合
400万円×21.4%(税率)=856,000円
▼個人と法人の差
133,500円(法人>個人)
課税所得額にかかる税率から支払う税金を概算してみると、法人税の方がある程度までは多いです。しかし、経費として盛り込める金額が個人より法人の方が圧倒的に多いです。また、不動産を売却して得られた金額においては、法人の場合別計算にはならず、所得として盛り込まれます。そのため、短期的に不動産を売買していく場合は、法人税の方が低くなることもあります。
サラリーマンの場合はさらに複雑?!
これまでの税計算の場合は、不動産投資を専業で行っている(他からの収入がない)ケースです。サラリーマンの場合、兼業になるため、会社員の所得も考慮する必要があります。
年収1,000万円の場合、給与所得における税率をみても33%程度になる可能性が高いです。もちろん、どれくらいの控除が認められるかによって変わってきます。とはいえ、経費として盛り込める金額がそれほど多くないため、税率を下げることは難しいでしょう。所得によっては、税率が高くなる境である可能性もあります。
ただ、不動産を購入する場合、損益通算ができるため、購入の費用など、減価償却費がいくらか盛り込めます。さらには、不動産を取得するために支払った費用など、経費の幅は広がります。
個人、法人に関わらず、納める税金を低くすることができます。もちろん、税金を計上する際は、専門家にアドバイスを貰うと良いでしょう。
税金面以外でも法人でのメリットはあり
法人にすることで、節税につながることはこれまでのことからも理解できます。それ以外にも個人と法人を比べると法人の方が、メリットがあるというケースもあります。
どれも税金に直結する内容であることは変わりませんが、例えば損失を計上した場合、繰り越せる期間が違います。個人の場合は3年ですが、法人の場合は、9年と個人の3倍近く長いです。
あとは、減価償却費の扱いも違ってきます。個人の場合は、決められた計算式によって一定期間の計上になります。法人の場合は、任意償却になるため、決められた計算式で求められた減価償却費の範囲内で、経費にする金額を自由に決めて良いのです。
他の事業との兼ね合いで、減価償却費を下げたい場合に調整ができます。つまり、利益を減価償却費で調節することができるのです。
銀行へ融資を求める場合に、利益が出ている決算書を見せることで、有利な融資が得られます。個人の場合は、マイナスになってしまい、銀行からの評価が下がるケースも考えられます。
さらに、利益が出た場合に少しでも税率を低くしたい場合、役員報酬の名目で支払うことで、さらに所得を下げることができます。
不動産からの収入を一定まで増やして終了という場合は、個人でも良いかもしれませんが、融資を上乗せし、再投資をして増やしていくと考えているならば、法人でも良いかもしれませんね。
いつか設立するなら最初から法人化した方が良い?!
もし将来的に法人化する場合、不動産投資をする前から法人化した方が良いと考える人もでてくるでしょう。しかし、これにはかなりのリスクが伴います。
というのも、基本的には黒字を3期続けることで、法人の信頼性も高くなり、融資が下りやすくなります。しかし、創業期(設立0期)の場合は、法人の信頼性がなく、基本的に個人の属性が見られることになります。
サラリーマンの場合なら、1,000万円近くの年収や箔がつく大手企業、もしくは職業がベースになります。
銀行の視点から見ると、設立期0期目の法人でも融資のリスクが低いと判断してもらう必要があります。
これらを考えると、融資が下りるケースは限られると思います。そのため、まずは不動産投資の経験や知識を身につけて、実績を重ねてから法人を設立すると良いでしょう。
まとめ
不動産投資における所得税と法人税の比較を行いました。税率や単純な額面の計算では、個人の方がよく見える場合もあります。しかし、法人の場合は経費として計上できる幅が広く、さらには減価償却の扱い、損失が計上された場合の繰り越し期間など、税金以上にメリットがあります。
あまりに不動産からの収入が低い場合は、法人化するより個人の方が良く、課税所得額が900万円程度になってからが法人化の目安です。
しかし、税率だけでみるのではなく、今後のプランなども踏まえて、法人化のタイミングを計ると良いです。
そして、税金に関することは実際には専門家に相談の上、処理していくことが重要です。