まだ記憶にも新しい仮想通貨NEM(ネム)の流出事件(不正送信事件)。
コインチェック社は、預かった仮想通貨の返還ができずに、これを被害者に現金で補償することになりました。
この補償金に対して、国は「課税対象」という見解を示しました。【返還できなくなった時点でのレート×預けていたNEMの保有数】が支払われ、仮想通貨を取得した時の価額を比べ、利益が出ているならば、雑所得として支払う。損失ならば、他の雑所得と損益通算できる税務上の処理を余儀なくされました。
仮想通貨NEMの保有者からすると、自分の望んだタイミングではなく、強制的に売却されたのと一緒です。中には利益や損失が確定しない仮想通貨のまま返還して欲しいという意見もあれば、一部では損害賠償金であり、非課税だという意見もあります。
しかしそれらの声も虚しく、雑所得扱いと国税庁から発表がありました。とはいえ、この判断は妥当だという意見も多いです。
法が整備されていない仮想通貨の売買において、補償金に対して一定の指針が示されました。
では、不動産投資案件に関してはどうなっているのでしょうか。不動産オーナーとして投資年数が長いと補償金などが発生するケースもでてくるでしょう。
本記事では、不動産オーナーに起こり得る補償金や見舞金、保険金、損害賠償金に対する課税について調べてみました。
課税対象となる内容は?!補償に対する課税を知る
近年では、地震だけでなく台風や大雨などの自然災害により、甚大なる被害が生じるケースも増えてきました。安定した収入を得るために不動産オーナーになったとしても、突発的な事項により、多くのお金を支払う事が生じる、もしくは、受け取ることになった。など、名目は、補償金か保険金か見舞金か損害賠償金など、内容によって変わってきます。
それぞれについて基本的に課税対象か理解しておきましょう。
補償金に対する課税
補償金は、様々な名目で支払われるものです。内容によって課税対象が変わります。ただ、不動産オーナーが、補償金を受ける場合は、収用(補償金によって強制的に国に売却)に関することが考えられます。収用に関する補償金の課税について見ていきましょう。
- 対価補償金:所有している不動産が国の事業によって収用された場合は、課税されるものの特例の適用があります。
- 収益補償金:収用されたことによって、不動産の収益が減収し、損失が出てしまった場合に、補填されます。その場合、不動産所得として課税対象となります。
- 経費補償金:事業の費用を補填するために交付されるお金。基本的に課税対象となります。
- 移転補償金:資産を移転する際に交付された補償金。交付目的に従って使用した場合は、総収入の金額として盛り込めないため、課税になりません。しかし、補償金が残った場合は、一時所得となるため、課税対象です。
- その他の補償金:名目によって変わりますが、お墓のお引越し(改葬料)など所得税法上非課税の場合は非課税になります。
補償金は、何かしらの対価に対する補償となるため、収益目的であれば改善されると考えて良いでしょう。所得税法上で規定されている非課税の補償なら、補償金は非課税という点もポイントです。
保険金に対する課税
「地震保険や火災保険などから、保険金を受け取りました。」この場合は、課税対象になるのでしょうか。
所得税法上では、損害保険契約により受け取る保険金は、突発的な事故で、資産の損害により受け取るものなので、非課税となっています。
保険金内で修理費がまかなえた場合、その残りの金額は課税対象ではありません。そのため、保険金を使用して修繕や改修などを行った場合、経費扱いはできません。逆に保険金では足りず、自己資金を出した場合は、経費扱いにできます。
ただし、法人の場合は非課税とならず、所得として計上する必要が出てきます。もちろん、修繕費などかかった費用は全額経費扱いができます。
保険金といえど、様々な名目が考えられます。名目と補填する内容によって、課税対象かそうでないかが分かれます。
見舞金に対する課税
不動産オーナーとして、何かしらの事由で、見舞金を受け取る事があるかもしれません。基本的に祝金や寄付金、見舞金は非課税扱いとされています。
しかし、金額によっては贈与とみなされ、課税される可能性も出てきます。見舞金として妥当な額は決められていませんが、参考となるのは入院に対する見舞金です。様々な判例を見てみると1回あたり50,000円と国税側は見解を示しています。ただ、50,000円以上でも見舞金として認められる場合もあります。
もし、支払う側も受け取る側も見舞金の金額に対して一定の認識を持っておくと税処理時にトラブルが起きにくいです。
損害賠償金に対する課税
支払われたお金の名目が損害賠償金であれば、非課税となります。冒頭にも書いた仮想通貨NEM(ネム)の流出事件において、支払われた金額が損害賠償金としての名目であれば、税金を支払う必要はありません。
不動産においては、建物を損傷されたことによる損害賠償金や業者への依頼に対して契約不履行による損害賠償金は非課税になります。
不動産オーナーもこれから不動産投資を始める方も知識として覚えておくと、事が起こった時に対処できるでしょう。
賃借人から預かる敷金の扱いは?!オーナーが変わったらどうなる?
賃貸不動産を所有している場合、入居者から敷金を預かっている可能性が高いです。敷金という名目でなくても、保証金かもしれません。これは、退去していく時に清掃料や原状復帰費用などにあてて、残りは返す必要があります。
入居中の物件であっても売買により、不動産オーナーが変わる瞬間もあります。その際に、敷金も建物の譲渡と同様に、継承することになります。つまり、旧オーナーから借りた物件もオーナーが変われば、敷金の返還は退去時のオーナーが処理することになります。
なお敷金は、償却や敷引分は課税されるため、注意が必要です。
賃貸契約において返還不要として取り決められた敷金や保証金に関しては、売上として計上され、すでに確定申告されていると考えられます。この場合は敷金の継承はありません。
税金に関わることは税理士に法廷で争う場合は弁護士へ
これまで、補償金や保険金などにおいて、課税対象かどうかについて理解してきました。
名目や内容はもちろんのこと、金額の妥当性について解釈が変わってきます。独自の判断で計上するのではなく、税理士や会計士などの専門家に相談の上、処理を行うことが安全です。
また、損害賠償請求においては裁判所に判断を委ねることになるため、弁護士を活用すると良いでしょう。
お金に対しては、支払われる大小ではありません。名目や内容が鍵になります。誤った税申告をすると、痛い目を見ることもありますので、しっかりと行いましょう。
まとめ
仮想通貨NEMの流出事件によって、該当する仮想通貨保有者には、補償金が支払われることになりました。名目は、仮想通貨を売却したのと同様で、雑所得扱いとして課税対象となりました。
この事件により、多くの投資家が各種補償金や保険金、損害賠償金など、一時的に支払われるお金に対して、課税対象かの関心が高まりました。
補償金など一時的に支払われるお金に対して、すべてが非課税ではなく、課税対象となるケースもあります。
事業や営利的に行っている場合は、基本的に課税対象となります。税金面での処理を行う場合は、税理士の先生や税務局に問い合わせながら、正しい税申告を行いましょう。