2020年に開催される東京オリンピックまで残りわずかとなってきました。再開発計画などが進んでいる関係で、不動産業界の取引が活発に行われています。一方で、オリンピック後の景気はかなり見通しが悪く、日本経済にとってはあまりいい流れにはなっていないとも言われています。不動産投資は、ある程度価値が一定であることを前提に行われる投資であり、このような景気の見通しは大きなリスクになりえるでしょう。果たして、オリンピック後の2020年以降も価値の下がらない不動産はあるのでしょうか?
本当に不動産部門全体が下落するのか?
本当に不動産部門全体が、2020年の東京オリンピック前後から下がるのかどうかについて考えていきましょう。実はこの話では賛否両論となっているのです。まずは、不動産部門全体が下がると考えられている理由についてみていきます。
最初に注目すべきは、東京オリンピック後の日本経済全体の先行きです。これは、あまりよくないのではないかといわれています。
この経済全体の動きに引きずられるように不動産部門全体も価格が下がっていくのではないかといわれているのです。
加えて、ここ5年前後で見られていた、中国系の人たちによる日本のタワーマンションに対する投資がひと段落しそうとのことです。
こうした、いわゆる外国人投資家たちは、オリンピックを機に、今までの利益確定をするため、2019年から、一斉に売却を検討し始めるのではないかといわれているのです。そうすると、不動産市場への供給量が増えてくるため、不動産価格全体が引きずられるように下落する可能性が高くなります。
また、オリンピックとは直接関係ありませんが、2019年10月ごろに計画されている消費税の引き上げについても、不動産価格に影響を与えるのではないかという議論も浮上してきました。駆け込み需要が発生したのちに、2020年以降、大きく値崩れするのではないかというのです。
一方で、不動産価格は変わらない、あるいは一時的に下がるかもしれないが、すぐに値を戻すのではないかという予測もあります。この予測の大きな理由は、前回の東京オリンピック後の市場の動きが関係しています。1964年の東京オリンピックの時は、次の年には日本経済全体が下降しましたが、その後力強く反転しました。
また、オリンピックだけではなく、リニア新幹線の開通や第二東名、首都高都心環状線の再開発といった、大きなインフラ整備事業が残っている関係で、人の動きが大きく変わるのではないかとみられており、この関係で、不動産業界はまだまだ力強く経済を下支えするのではないかという考えもあります。
他にも、オリンピックには直接関係ない、2022年問題というものがあります。
これは、生産緑地法の改正を受けて、2022年以降に、生産緑地の指定が解除されて宅地化が進む土地が増えるのではないかという説です。
このように、様々な要因が絡み合っており、下がるという説も、上がるという説も、どちらも十分に説得力があります。そのため、一概にオリンピック後は下がると結論付けるのは難しいといえるでしょう。
地方と東京の格差はどうなるのか?
一方で、確実に悪い知らせもあります。それは、地方と東京の格差が進み、東京の一極集中化がさらに極まってくるのではないかということです。人口動態を確認すると、なんと2017年の動きでは、大阪府でも全体の人口が減っていることがわかりました。こうした人口動態は、様々なところで歪みを生み出すのは間違いないでしょう。
実際問題として、すでに、地方では、不動産価格の下落が始まっています。駅前にあるマンションや、主要駅から車で10分以内の一軒家などでも、空き家が目立ってきているのです。1990年代であれば、すぐに買い付けが出来たような立地や環境でも、徐々に難しくなってきています。
加えて、2020年までは、東京への人口流入は進み続けるといわれており、この傾向はずっと続くのではないかともいわれています。そして、この人の動きはオリンピック後も変わらないでしょう。
確かに、オリンピックで東京の景気は良くなっているのですが、それ以上に、地方に人が残る理由、あるいは人が帰ってくる理由がなくなりつつあるからです。
家は、人が住んでいないと思った以上に痛みが激しくなっていきます。2年3年と空き家が続いている物件に、価値を生み出させようとすると、大きなリフォームが必要になるなど、投資額も増えてくるでしょう。こうした流れで、地方の物件は今まで以上に売られてしまう可能性があるのです。
価値の下がらない不動産もある
このように考えていくと、オリンピック後も価値の下がらない不動産の特徴が見えてくるかと思います。ひとつずつ確認していきましょう。
まず、わかりやすいのは都心の物件です。特に、駅近の物件や生活必需品が手に入りやすい、あるいは車が必要ないような物件は、今後も需要がありそうです。
全国的に少子化による人口減が懸念されていますが、東京都心部の人口はまだまだ増え続けています。今後も、地方からの人の流入が続くのであれば、都心部の物件は慢性的に需要高・供給低が維持されることになるでしょう。
加えて、2020年以降にも続いていく再開発計画をもう一度確認してみることがいいでしょう。例えば、リニア新幹線に目を向ければ、神奈川県相模原市にある橋本駅周辺は注目に値します。また、新東名高速道路の開発に目を向ければ、神奈川県厚木市の連結が良くなるので、やはりこの周辺がお勧めです。
地方では、名古屋圏と北九州圏が活発に活動を続けているため、これらの注目しておくことも悪くないでしょう。名古屋はリニア新幹線の開通があるため、更に開発が進んでいきます。北九州は、多くのITベンチャー企業を積極的に誘致しており、徐々にそのベンチャーが成長し始めました。ベンチャーが成長すれば、雇用が生まれ、そこに住む理由が出てきます。不動産価格は、こうした周辺環境にも敏感に反応するため、人口動態やその流れの性質には注意が必要です。
下がることがチャンスになるかも?
本来、市場動向というのは上下していくものです。日本の不動産価格は7年~8年のサイクルがあるといわれており、今回の価格上昇はだいたい2012年から続いているのですが、2020年にちょうど8年目を迎えます。オリンピックがあろうがなかろうが、市場サイクルで下がるのではないかという人もいます。
つまり、2020年の価格の下落は、オリンピックや日本の景気の低迷といった外部的な要素ではなく、不動産の価格サイクルが正常に作用しているからかもしれません。とすると、次の上昇ウェーブに乗るための仕込みのチャンスが出てくるともいえるでしょう。
投資とは、考え方次第で、どのような相場でも勝つことができる、非常にアクティブな活動です。このアクティブさを維持する方法は、情報敏感になり、入ってくる情報の判断を簡単に行わないことが大事でしょう。単に下がることに恐怖しているだけでなく、また次の攻めの一手を考えることも、投資を進めていく上で大事な視点です。
まとめ
2020年に行われる東京オリンピックの前後に、日本経済は大きく揺れ動くのは間違いないでしょう。しかし、この日本経済の揺れ動きに連動するように不動産業界の価格が下がるかどうかは、実は簡単には判断できない要素がたくさん詰まっています。様々な情報を多角的に見通しながら、最善の選択をしてみてください。
また、時には見方を変えてみることも大事です。思った以上に、投資というものは、自由に考えることができる活動でもあるのです。