ホーム > 資産防衛 > 中国がアメリカの車関税下げに踏み切る!トランプ大統領がツイート

中国がアメリカの車関税下げに踏み切る!トランプ大統領がツイート

2018年を騒がせた米中貿易戦争、年末に行われた首脳会談後にトランプ米大統領がその結果をツイートしたことが大きくニュースに取り上げられました。そしてその内容は「中国が自動車関税を引き下げることに合意した」というものでした。この中国側の「引き下げ合意」にはどういう意図があるのでしょうか。また2019年、米中貿易戦争はどう進展するのでしょうか。

トランプ米大統領はツイッターで「中国の車関税下げ」について告知


2018年12月2日、トランプ米大統領は中国が米国の自動車に課す40%の自動車関税を引き下げることに同意したとツイッターで公言しました。アルゼンチンでの米中首脳会談後のことです。これは2017年から徐々に過激さを増していった米中貿易戦争において中国側が譲歩した形になります。中国の諸外国に対する自動車関税は15%であり、対米に限り25%上乗せする形で40%となっていました。

この「引き下げ」の実質的な内容は対米自動車関税40%のうち上乗せ分25%を撤廃し諸外国と同様の15%とするものです。中国側はこの「引き下げ」に加えて「穀物などの米国品即時輸入」を行うこととしています。つまり中国が約束しているのは「米国から自動車を輸入し易い環境を作り、加えて穀物はすぐに輸入して米国の貿易に貢献します。」といった内容になります。

その対価として米国は「2019年1月から3月を猶予期間とし、その猶予期間は関税措置による追加制裁を行わない」としています。2017年から2018年にかけて米国は多くの関税措置をとってきました。それは中国を意識したものが中心であり、そして更なる関税措置が予告されていました。猶予期間を設けてそれを延期するというのが今回の合意における米国側の対応です。

米国側は更なる関税措置の延期と再考、中国側は自動車関税の引き下げと穀物などの即時輸入での合意。まるで米国が中国に脅しをかけているかのようです。米中貿易戦争は緩和に向かっているわけではないのでしょう。米国側は中国に一体何を望んでいるのでしょうか。また、どうしてこの米中貿易戦争が起こってしまったのでしょうか。

中国側がアメリカ産の車関税を引上げたのはなぜ?


そもそも中国は何故対米国に限り25%の関税上乗せの措置をとることになっていたのでしょうか。その原因は米国が行った関税措置による貿易制裁であり、その背景にはアメリカが抱える莫大な貿易赤字があります。また現在の米中関係の問題は貿易問題のみにあらず両国間の企業進出問題や信用問題も混在しているのです。その全容を知る為にはトランプ米大統領就任時の2017年から米中関係を振り返る必要があります。

2017年トランプ米大統領就任時、米国は莫大な貿易赤字を抱えていました。中でも取り分け赤字が大きかった相手が中国です。中国で製造される自動車部品や精密機械が安価である為、米国企業の多くが積極的に中国製品を輸入していました。それとは対照的に中国における米国からの輸入品はとても少なかったのです。中国は輸出を積極的に行うものの、輸入に関しては消極的な姿勢です。この状態が続けば米国産業の衰退、経済低迷を免れません。トランプ大統領はこの問題を解決すべく中国に米国品輸入を促すよう働きかけましたが芳しい結果にはなりませんでした。

2018年1月、中国の対米貿易額が発表されました。そこで発覚した中国の対米貿易黒字額は2,758億1,000万ドルであり過去最高のものでした。このことがトランプ政権に火をつけます。米国は緊急輸入制限を発動し、一部の輸入品に追加関税を課すことにしました。これは対中国に限った措置ではなかったのですが、対象となった品目は中国からの輸入割合が大きい品目であった為中国は大きなダメージを受けました。そして中国は報復する形で米国からの輸入品の一部の関税を引き上げたのです。これが米中貿易戦争の始まりです。

その頃中国企業ZTEがイランへ米国製品を輸出したという理由で米国側から制裁を受けることになりました。米国ではイランとの貿易が禁止されているのです。ZTEが受けた制裁内容は米国内での商品販売禁止です。ZTEは大手の通信機器メーカーであり、米国内でも大きなシェアを誇っていました。この制裁は中国経済にとって大打撃となるわけです。この制裁を避けるべく中国側が動き出します。米国からの輸入品の一部の関税引き下げ措置を発表したのです。これを受けて米国はZTEの米国内での商品販売禁止令を撤廃することにしました。

しかしその後も米国による貿易制裁は進み関税追加の対象となる品目は増加していきました。またそれに報復する形で中国も米国に対する関税措置をとります。米国が関税措置をとっては中国も同等の関税措置をとるということが繰り返されていき、遂に貿易商品の中で高価格を誇る自動車が対象に加わったのです。両者の「目には目を」のやり取りは留まることなく、世界中を巻き込む大問題へと発展しました。米国が関税を引き上げるのには「貿易赤字問題を解消させる」という目的がありました。では中国が関税を引き上げるのには何の目的があったのでしょうか。

関税措置は他国からの輸入を制限する為に行われるものです。中国は基より輸入の少ない国である為、関税措置を取ったところで大きな変化は起きません。では何故米国に対して関税措置をとったのでしょうか。真意は「米国への威嚇」であると考えられます。報復姿勢を見せることで勢いよく進められていく米国の関税措置を食い止めようとしたのでしょう。関税を引き上げることには特に意味はなく、報復姿勢を見せることが重要だったのです。不可解に思えたアルゼンチンでの米中首脳会談の合意内容もこのことを前提にすると納得がいきます。

米国にとって中国が貿易を避けるべき相手であるのとは対照的に、中国にとって米国は失うことの出来ない貿易相手なのです。米国に今以上の関税措置を取られてしまっては米国への輸出が完全に途絶えてしまいます。世間を騒がせた米中貿易戦争は表面的には大国同士の報復合戦であるように見えましたが、実際には上下関係がハッキリしている中で中国が米国の関税措置をなんとか食い止めようとしていただけなのです。

米中首脳会談で一体何が?米側の報復関税は撤廃されるか


米側が望むのは貿易赤字問題の解決だけではありません。話題となっている技術移転、知的財産権、サイバー攻撃などの分野の両国間の問題について納得のいく回答・対応を中国に求めています。当初は純粋に「貿易赤字問題の解決」を目的に開始された関税措置ですが、これらの問題がそれを過激なものにしていきました。今回の猶予期間で米国側が中国に望むのは、対米貿易黒字額減少に向けた取り組みと、諸問題に関しての誠意ある対応なのです。

アルゼンチンで行われた首脳会談では、米国側から中国側へこれらの要求がきちんと伝えられたでしょう。貿易相手国として米国を失うわけにはいかない中国は米国側の全ての要求を受けたうえで合意したと考えられます。しかし、3カ月という期間でこれら全てに対する解決策を見つけられるのでしょうか。問題の数とそれらの重要性からすると期間が短いでしょう。とても深刻な状態です。猶予期間が終了した2019年4月、中国への関税措置が撤廃されることはなく、米国からの更なる関税措置による制裁が加えられている可能性が高いでしょう。

まとめ


米国が更なる制裁を加えるかどうかは猶予期間の3カ月で中国側がどう行動するかで決まります。しかしその問題量とそれらの難易度を考えるに、中国が、米国側が納得する回答を出せる可能性は低いでしょう。そしてそれは米中の貿易が途絶える可能性が高いことを指します。世界の行く末を左右する3カ月です。メディアから目が離せません。