住宅ローン減税が3年間延長されると、経済的にどのような影響があるのでしょうか。住宅ローン減税の延長は、政府による消費税増税対策の一環の取り組みです。増税後も新規住宅の取得やリフォームを促すための施策ですが、本当に住宅取得が有利になるのかどうかが気になるところです。今回は、住宅ローン減税の延長によってどのような効果があるのか説明します。
景気対策に必要「住宅ローン減税」を3年延長へ
新規住宅の取得やリフォームの際に活用できる「住宅ローン減税」について、期間が延長になる方針が出ています。これは消費税増税対策の目玉のひとつともいわれる取り組みです。住宅ローン減税のしくみを拡大することで、消費増税にともなう住宅の駆け込み需要やその反動による購買意欲の減少をおさえるのが狙いになっています。この方針によれば、住宅ローン減税の対象期間は現行の10年からさらに3年延長され、あわせて13年になります。
住宅ローン減税の控除額は、10年目まではこれまで通り年末のローン残高の1%です。11年目から13年目については、年末のローン残高の1%と建物価格の2%の1/3を比較してより少ないほうが控除額となります。ただし、11年目から13年目までの控除額は、基本的に建物価格の2%の1/3となるように調整されるようです。仮に建物価格が1500万円だった場合、建物価格の2%の1/3は10万円です。11年目から13年目まで10万円ずつ控除されれば、現行よりも30万円多く控除を受けられることになります。
住宅ローン減税が拡大する場合、いつ住宅を購入すればいいのかという疑問も出てきます。住宅ローン減税の拡大において建物の2%相当額が定められているのは、これが消費税の増税幅にあたるからです。土地は消費税非課税となっているため、消費増税による影響はありません。とはいえ、消費税増税後は建物価格が上昇するので、住宅ローンにかかる総額は増加します。増税後に新規住宅の取得やリフォームをおこなえば控除額が増える反面、金利負担も増えるということです。これは、住宅ローン減税の対象期間が終了する14年目以降にも大きく影響します。
よって、住宅ローン減税を利用する場合、実際のローンの組み方や総額も考慮したうえで慎重に時期を判断したほうがいいでしょう。住宅ローン減税の拡大は、長期間にわたり住宅ローン減税が受けられることで住宅の取得やリフォームを促す効果が期待されています。しかし、実際には制度の拡大を待たずに住宅ローン減税の適用を受けたほうが、経済的であるケースもあります。住宅ローン減税の拡大については具体的な実施時期は定まっていないため、今後の展開を注視しておいたほうがよいでしょう。
そもそも住宅ローン減税とはどのような制度か?
住宅ローン減税は、条件を満たして住宅の取得やリフォームをした場合に、所得税の一部が戻ってくる制度です。住宅ローン減税は通称であり、正式な制度の名称は「住宅借入金等特別控除」です。なお、住宅ローン減税は「住宅ローン控除」とよばれる場合もあります。控除は税金からある金額を引き去ることを指しており、その意味は減税と同じと考えて問題ありません。住宅ローン減税を受ける条件にはさまざまな場合分けがあるため、それらをしっかりと把握しておく必要があります。
まず、新築住宅を取得して住宅ローン減税の適用を受けるためには、現行ではローンの期間が10年以上あることが要件となります。住宅の種類は、一般住宅だけでなく認定長期優良住宅や認定低炭素住宅でも構いません。認定長期優良住宅とは、長期間住宅を使用するための設備を有していたり、維持保全の方法を定めていたりする住宅です。また、認定低炭素住宅とは、二酸化炭素の排出を抑制できる設備や機能を備えた建築物をさします。新築住宅に対する住宅ローン減税の最大控除額は、総額で400万円です。ただし、認定住宅の場合は500万円までとなります。また、控除の対象となる期間はいずれも10年間です。
さらに、リフォームや増改築をして住宅ローン減税の適用を受ける場合にも、ローンの期間が10年以上であることが現行の条件となっています。リフォームや増改築の種類は、たとえば耐震や省エネなどが認められています。ほかにもバリアフリー化をはじめとして、さまざまな増改築工事が住宅ローン減税の対象です。なお、同居対応や長期優良住宅の場合でも、一定の条件を満たせば住宅ローン減税の対象になります。最大控除額や控除期間については、新築住宅と同様となっています。
ローンを組んで新築住宅の取得やリフォームをする場合、住宅ローン減税の条件を満たすのはそれほど難しくありません。そのため、住宅ローン減税は利用しやすく、有利な控除が受けられる制度となっています。ただし、総額で400万円というのはあくまで控除金額の上限です。住宅ローン減税を受けるすべての人が400万円の減税を受けられるわけではないため、個別の状況に合わせた試算をきちんとおこなう必要があります。
加えて、住宅ローン減税を受けたいと考えるなら、入居や住宅ローンの契約の時期には注意が必要です。なぜなら、入居の年とローン契約の年が異なると住宅ローン減税の対象期間が短縮される恐れがあるからです。住宅ローン減税の対象となるのは、入居の年から10年と定められています。そのため、住宅ローン開始の有無にかかわらず、住宅ローン減税の対象期間のカウントは入居の年からになります。たとえば、入居した翌年に住宅ローンの契約を結ぶことになれば、住宅ローン減税の期間は1年短縮になるでしょう。このことを考慮すると、入居や住宅ローンの契約は年末年始をなるべく避けておこなうことも重要なポイントとなります。
住宅ローン減税はどのように手続きするか?
住宅ローン減税の手続きができるのは、確定申告の時期です。新築住宅を取得またはリフォームをおこなった年の収入について確定申告をする際におこないます。税務署に必要書類を提出すると、住宅ローン減税の適用が受けられます。提出する書類はさまざまなものを用意しなければなりません。たとえば、金融機関が発行する、住宅ローンの残高を証明するための「残高証明書」が必要です。また、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合は、認定通知書の写しも必要になります。認定通知書は、不動産会社から入手できます。ほかにも、契約書の写しや登記事項証明書なども必要なため、書類の準備は早めに対応したほうが安心です。きちんと申告をおこなえば、確定申告をした約1カ月後に指定した金融機関の口座へ控除額が振り込まれます。
なお、住宅ローン減税は、所得税だけでなく住民税にも適用になる場合があります。それは、所得税を控除しても控除しきれない額があるときです。所得税よりも住宅ローン減税による控除額が多ければ、超過分を住民税から控除してもらえます。この場合、住宅ローン減税を受ける人の申告情報が税務署から市町村に伝達されることにより、住民税の控除がおこなわれます。そのため、自分で改めて市町村の窓口に申告に行く必要はありません。ただし、住民税からの控除できる額には上限もあります。また、住宅ローン減税による住民税の控除は還付ではなく、翌年の住民税の減額によっておこなわれます。
まとめ
住宅ローン減税は、新規住宅の取得やリフォームに役立つ制度です。住宅ローン減税をうまく活用すれば、多くの控除を受けられます。増税により住宅ローン減税の期間が延長されれば、さらに控除が受けられる金額も増えるでしょう。ただし、増税はローンの総額にも大きく関係するので、住宅の取得時期は慎重に判断したほうがよいでしょう。住宅ローン減税の延長は経済にも大きく影響するため、その動向に注目が集まっています。