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不動産投資にとって「民泊」は有効かどうか?

Photo by Alisha Hieb on Unsplash

不動産投資といえば、基本的には賃貸を中心とした毎月の家賃を利用した投資が一般的でした。ある程度の資本を持つ人は、土地や建物を売買するという手法で利益を上げますが、固定資産税やローンの利率などを考えるとリスクが大きいというのが一般的な見解でしょう。

しかし、ここにきて不動産投資でも受け身ではなくアクティブに動くことで、より大きな利益を挙げられるのではないかという議論が出てきました。それが「民泊」です。果たして、「民泊」は不動産投資という視点からすると、有効といえるのでしょうか。

 

「民泊」とは何か

そもそも、どうして「民泊」という仕組みが注目されているのでしょうか。「民泊」とは、宿泊施設としてビジネスを行っている、いわばホテルや旅館とは異なり、一般的な家屋を、ホテル代わりに旅行客などに提供し、宿泊料をとるというビジネススタイルです。

現在、日本全体、とりわけ東京や京都、大阪などの外国人旅行客が集まる地域では、圧倒的にホテルが不足しており、稼働率が90%を超えているような地区も多くなっています。

90%ということは、まだ余っているのではないかと考えがちですが、この数字は平日も含めた平均となっているため、土日や祝前日と呼ばれる曜日では、ほとんどのホテルや旅館が空いていないといえるでしょう。場合によっては、カプセルホテルすら泊まることが出来ないという事態が発生しているようです。

加えて、2020年に東京オリンピックがある関係で、宿泊施設の拡充は国を挙げた主要な問題として注目されているのです。こうした圧倒的な需要にこたえるために「民泊」という仕組みが2014年前後から注目されていました。

こうした需要から、不動産投資の手法のひとつとして「民泊」が注目されたのです。自分が持っている不動産を利用するものや、賃貸マンションなどを借りて、「民泊」を行う不動産として利用するといった手法が出てきています。

例えば、「民泊」によって1泊8千円という料金設定をしたとしましょう。そして、月30日中の半分である15日間に旅行客が利用することになれば、8千円×15日=12万円のお金が生み出されます。もし、自分が持っている賃貸マンションにかかる経費が月々10万円であれば、不動産投資としては見逃せない収益となります。

近隣に、歴史的建造物や旅行客の眼の引くアトラクション施設などがあれば、料金や稼働率も変わってくるかもしれません。今までの賃貸料と比べて、はるかに利益を生み出すことができると計算している人も多いのです。

しかし、「民泊」は、今までの宿泊施設であるホテルや旅館業を営んできた人たちと異なり、経験やノウハウが少なく、かつ周辺住民との兼ね合いでトラブルが目立つようになってきています。そのため、2018年6月に民泊に関する法律が制定されるといった形で、「民泊」自体の環境に変化が出てきているのです。

 

「民泊」の種類について

「民泊」には、大きく分けて3つの手法があり、どれもそれぞれ特徴を有しています。この3つを確認していくことで、「民泊」と不動産投資の関係性をより深く理解していきましょう。

 

1.オーナー+ホスト

「民泊」とは基本的に、自分が所有している不動産を宿泊施設代わりに利用してもらうことで収益を上げていきます。そのため、「民泊」といわれて最もイメージしやすいのが、この「オーナー+ホスト」型と呼ばれる仕組みです。

民泊で利用する不動産も、民泊というサービスを提供する窓口もすべて自身で主体的に行うものと考えてください。「オーナー+ホスト」型は、「ハイリスク・ハイリターン」といわれています。

なぜなら、民泊利用者が落としていくお金すべてが、オーナーの手元に入ってくるためです。そのため、高稼働率が見込める不動産を持っている、あるいはリノベーションをして民泊施設として非常に魅力的な不動産となっている場合には、勝算は十分にあるといえるでしょう。

一方で、こうした不動産はそもそも市場にないといった場合もあるため、今から「オーナー+ホスト」型で民泊をやりたいと考えていても、なかなか厳しいといった環境があります。不動産投資としての不動産を複数持っているようなら、ぜひ、今ある不動産のリストを再確認してみてもいいでしょう。

 

2.オーナー+転貸

「オーナー+ホスト」型では、稼働率が低すぎると大きな赤字になってしまう可能性があります。そこで、そこそこの利益でいいからリスクを抑えたいと考える人もいるでしょう。

そういう人におすすめなのが、「オーナー+転貸」型の民泊です。「オーナー+転貸」型は、不動産自体の所有者は自分となりますが、実際の運営は個人や事業主に任せ、その不動産を貸すという仕組みをとります。

最近、不動産広告などを見ていると「転貸可能物件」という表現が出てきますが、この表現はまさに民泊のためにあったともいえるでしょう。「オーナー+転貸」型では、毎月の収入は、あくまで民泊を行いたい個人や事業主からの賃貸料収入であり、固定の収入となります。

一定の収入を期待できますが、貸している事業主が上手く広告を打つことで、大きく稼働していた場合でも収入が変わることはありません。稼働率という変動する部分を、賃貸料という形で固定にすることで、リスクを抑えるという仕組みと考えられます。

 

3.賃貸ホスト

最後に民泊の手法としての賃貸ホストについてみていきましょう。
賃貸ホストとは、先ほどの「オーナー+転貸」型の、転貸先である個人として民泊を行うということになります。

この仕組みの場合、元手が非常に少なく抑えられるため、売り上げが賃貸料を超えていれば十分な収益となるといえるでしょう。とはいえ、一般的な賃貸よりも高額になりがちであり、1~2軒程度では、人ひとりの生活費を賄うことも難しいかもしれません。

東京や大阪、京都など稼働率が期待できる物件を数多く仕入れることができる人だけが試してみるというのがお勧めです。この場合は、不動産投資というよりも、むしろ民泊業を営むという考え方のほうが混乱も少ないのではないでしょうか。

 

最近、「民泊」環境は激変している

不動産投資の新たな形として注目されている民泊ですが、最近の環境は大きく変わってきました。特に2018年6月の住宅宿泊事業法「民泊新法」が制定され、民泊の中にも適法・違法といった概念が出てきてしまったのです。

 

民泊新法における民泊の特徴は大きく3つ

「年間営業可能日数最大180日」「届出制」「住居専門地域での営業は各自治体の条例に任せる」というもので、年間営業可能日数が180日というのは非常に重要といえるでしょう。

今まで民泊を行ってきた事業者にとって、稼働率はだいたい70~80%で想定していました。しかし、年間180日ということは、稼働率50%というところです。

また、自治体によっては、そもそも住居専門地域では営業できなかったり、仮に行うにしても、防火や防犯などの様々な対応を求められたりします。そのため、今まで民泊を行ってきた投資家の中には、民泊から手を引くという決断をしている人も少なくありません。

一方で、民泊新法という形で、今までグレーだった部分も、違法という切り口で排除することができるようになっています。最初は苦しいかもしれませんが、違法民泊を行っている業者や個人がいなくなれば、大きな利益を上げられるのではないかと考えている人もいるのです。果たしてどうなるのか、ぜひ注目してみてください。

 

まとめ

民泊と不動産投資についてみてきました。民泊を行うというのであれば、2020年の東京オリンピック以降の外国人旅行客がどのように動くのかも図る必要があります。

一方で、少子高齢化の観点からしても、不景気という観点からしても、今まで以上に稼働率や賃貸料を挙げるというのは難しい部分もあります。

このままでは、じり貧になっていくことも考えられる不動産投資業、ぜひ、民泊というアクティブな不動産投資の情報も得ておくことをお勧めします。