地価上昇が全国に広がってきました。国土交通省が発表した2018年の公示地価の全国平均は住宅地、商業地、工業地ともに上昇しており、地価の回復は着実に進んでいるように感じます。
東京、名古屋、大阪の三大首都圏においては、住宅地や工業地は微増とも言えますが、商業圏の地価は特に3.9%の上昇と手応えを感じています。さらに地方四都市(札幌、仙台、広島、福岡)においては、住宅地と工業地が3.3%の上昇だけでなく、商業地は7.9%とかなりの伸びを示しています。
このまま数年にわたり上昇することが見込めれば、東京、名古屋、大阪の三大都市圏だけでなく、地方都市の魅力も増していくでしょう。
全国に起こっている地価上昇は、何が要因なのでしょうか。本記事では特に上昇率が顕著な商業地を中心に地価上昇の理由と今後の日本について考察していきます。
インバウンドとインフラ開発が地価上昇の要因
ここ数年の地価上昇の要因は、訪日外国人観光客の上昇による観光地の開発や、その地域で働く人の住居確保などがあげられます。2012年に安倍政権が誕生し、金融政策や財政出動のアベノミクス効果の結果、円高から一気に円安に向かい、外国から日本に足を運びやすくなったこともベースにあります。
2020年に開催する東京オリンピックを機に、これまで以上に訪日外国人観光客が増加し、インバウンド向けのサービスが増加していくことが予測され、それに伴ったインフラ開発が経済の活性化を期待させます。
一時的なバブルではなく、数年にわたり緩やかに地価が上昇していることから、短期的に終わることではなく、中長期的な需要が見込めると考えられます。
訪日外国人が日本を気に入り、住んでみたいと考えるようになれば、住宅需要増から住宅地の地価も上がっていくことが予測できます。しかしこれは、短期的な地価の上昇ではなく、長期的な視点で見ていく必要があり、各自治体の政策との連動が必要不可欠です。
各都市圏の傾向から今後を予測する
地価上昇の要因としては、訪日外国人観光客が増え、宿泊施設の需要増や観光産業の活性化があげられます。地域別に分けた時に、すべてが同じとは考えにくいです。三大首都圏(東京・名古屋・大阪)と四大都市圏に分けて、地価上昇の傾向を見ていきましょう。
首都圏
東京23区をはじめとする大都市圏やその周辺の23区外、千葉、埼玉、神奈川においても地価上昇を確認できる地域はあります。ただし、都内からのアクセスが悪いところは軒並み下がっており、地域ごとに選別していく必要があります。
外国人が年々増えていると感じる首都圏は軒並み上がっており、平均6.4%の上昇率です。中でも、渋谷区は9.2%、中央区は前年度の伸び率よりは落ちたものの8.4%、台東区は7.3%と地域ブランドで上がっているのではなく、利便性や実用性で上がっていると考えられます。
埼玉県は伸び方も緩やかで、一番伸びている地域でも浦和区の3.9%、大宮区や南区の3.3%です。千葉県は君津市の伸びが一番多く6.4%、市川市は4.6%と好調です。君津市はアクアライン効果も影響を受けていると考えられますし、市川市は都内へのアクセスの良さです。神奈川県の横浜市内は全体的に上がっており、中でも西区は7.1%の上昇率です。
これらの数字は商業地の数字であり、住宅地の地価は上昇しているといっても2~4%程度です。
住宅地より商業地の方が伸びている理由は、観光客向けの宿泊施設がまだ十分とは言えず、オリンピックに向けた開発が現在進行しているからと考えられます。誰もがイメージするホテルや旅館ではなく、オフィスビルを改装して宿泊施設へとリノベーションすることもニュースで見るようになりました。
オリンピックを迎える今でも伸びているため、今後さらに期待ができると言えるでしょう。
名古屋圏
名古屋圏は、トヨタ自動車をはじめ、力強い企業も多く、観光以外での都市開発も地価上昇の要因といえます。
名古屋では、リニアモーターカーの停車駅が2027年に開業予定であるため、将来を見越した開発が行われています。リニアモーターカーが開通すれば、東京までの時間もかなり短縮されるようになり、利便性も高まると予測できます。
名古屋駅周辺では、大型ビルも増え、オフィス人口も増大しました。それに釣られて飲食店も増加しており、結果的に住宅地の需要も増加してきています。
名古屋市内の商業区は、特に中村区や中区はともに12.2%も上昇と、かなり大幅な上昇率です。名古屋市以外では、長久手市が5.8%、日進市が4.6%と上昇率が顕著です。長久手市や日進市ともに、人口増加率も高く、名古屋市のベッドタウンとして発達しています。都市開発が地価上昇を後押ししていると考えられています。
名古屋圏は将来的にはリニアモーターカーの開通という明るい話題もあり、人口増加率が高い地域もあります。観光産業だけでなく、住宅に関しても期待できる地域と言えるでしょう。
大阪圏
大阪圏は訪日外国人観光客の中でも、観光地として知名度が高い京都や神戸を抱えており、インバウンド向けの開発が進んでいます。特に京都市の観光客の増加率は大きく、10%を超えています。
大阪の主要都市は軒並み人気のある地域で、東京オリンピック後には大阪万博も控えているため、インフラ開発なども数年にわたり好調をキープしていくことでしょう。
京都市の地価上昇率は10%を超えるところもあり、京都市全体で9.1%の上昇率。中京区が11.7%、東山区が15.4%、下京区が14.5%と頭一つ抜き出ています。
大阪でも、市内全体では8.8%の伸びで、10%超えも福島区が11.9%、西区が11.3%、浪速区が12.5%、北区が12.1%、中央区が13.0%、と大幅に上がっています。大阪府堺市北区の12.5%や兵庫県神戸市中央区の10.6%の上昇率もかなり好調と言えます。
大阪圏の地価バブルを紐解いていくと、海外でも高い評価を受けているのは食文化で、ニューヨークタイムズでも「たこ焼きなど、大阪の独特な食文化は尽きることのない欲求」と好評価を受けるほど、認知されているようです。さらには、行政のインバウンド向けのサービス強化がさらなる訪日外国人観光客を呼び込んでいると考えられ、その結果、地価上昇もしばらく続くと考えられます。
四大都市圏
九州経済の中心地である福岡や、北海道の玄関かつ中心地とも言える札幌、東北地方の大きな経済圏仙台市、そして、地方の中でも活性化が著しい広島市など、平均すると7.9%と商業地の地価上昇率がかなり高く、三大都市圏を大幅に上回っています。細かな地域ごとに見ていく必要はありますが、四大都市の中でも福岡市の商業地は10.6%の上昇とかなりの伸び方です。
札幌は観光産業を中心に、そのほかの地域は商業店舗やオフィスなどが好調なのが、地価上昇のベースにあります。
その地域の特色を細かく見ていくことで、さらなる上昇が期待でき、明るい未来が予想できます。
注意!地方都市すべてが伸びているわけではない
訪日外国人観光客が増加し、人口増加による商業店舗やオフィスが活性化している要因が、商業地の地価上昇に繋がっています。しかし、すべての地域がそうではなく、上昇している地方都市もあれば、下がっている地域もあります。
三大都市圏や四大都市圏を除く地方都市は、-0.4%軒並み下がっています。観光資源や政策などの課題もあげられると思いますが、現状では伸びている地域とそうでない地域の二極化が進んでいるように感じます。
さらには地域によっては人口減少の波も来ており、投資を考える場合は、見極めが必要です。
まとめ
公示地価の上昇から、明るいニュースも多く、経済が活性化している様に感じます。訪日外国人観光客が増加し、以前にも比べ海外の方が増えていると実感でき、観光産業が活性化していると言えるでしょう。
大都市圏や四大都市圏を中心に、商業地の地価上昇が期待でき、地域によっては明るい材料も多いです。
例えば、東京ならオリンピックはもちろんのこと、それ以降のインバウンド増加。名古屋はリニアモーターカーの開通、大阪は万博などが将来も景気を維持する材料です。
今後、不動産投資などを行おうと考えているならば、公示地価や地価の上昇率だけでなく、その地域がどのような経済で支えられているのか。そして人口増加の観点も考慮すべきです。国内でも魅力的な地域は存在するため、しっかりと分析することが大事です。