事業継承などをするときの企業価値の中には「不動産価値」が含まれます。不動産は企業が保有している大事な資産なので、その不動産価値は企業価値の中に含まれているということです。その不動産価値を算出する方法は「DCF法」「直接還元法」「積算法」の3つになります。そこで今回は、この3つの算出方法について詳しく解説します。
DCF法について
不動産の評価方法に「収益還元法」という方法があります。将来の収益を現在価値に割引して評価するのが特徴です。収益還元法は2種類あります。「DCF法」と「直接還元法」です。ここでは「DCF法」について解説します。
DCF法とは、その不動産の「所有期間中に得られる利益」と「売却した時に得られる利益」を、現在価格に割り戻すという方法です。収益物件においては、最も精密で細かい計算が必要になります。
DCF法で算出されるのは、以下の点です。
1. 将来賃料収入から得られる利益の金額。
2. 割引率を加味した、将来得られると予測される利益。
3. 割引率を加味した、保有期間に応じた売却価格(保有期間により下落するため)。
例えば事業継承する際に、企業の保有している不動産は、企業継承する側にとっては大きな資産になります。大抵が商業ビルや住宅不動産なので「収益を上げる不動産」として、会社の資産になるからです。そのような時には、収益不動産を保有しているときの利益と、将来的に売却するときの利益を計算するDCF法を活用します。
直接還元法
収益還元法のもうひとつ「直接還元法」は、DCF法の簡易版だと思ってください。前項のDCF法が「将来的な売却益まで加味する」のに対して、直接還元法は「所有期間中」だけを加味して不動産価値を算出します。つまり、その不動産が所有期間中に生み出すであろう「賃料収入」から逆算して、現在の不動産価値を算出するという方法です。直接還元法の計算式は、「純利益(通常は1年間)÷還元利回り」になります。
純利益とは、その不動産が1年間で生み出す「収益」になるので、賃料収入から必要経費を抜いて計算します。例えば、ある物件の賃料収入が400万円で、経費(修繕費や税金など)が80万円であれば、その物件の純利益は320万円です。
還元利回りとは、その物件から得たい利回りのことで「純利益÷物件取得価格」で求められます。還元利回りが10%であれば、その物件の取得価格は10年で回収(100%÷10%)できるということです。
そのため、言い換えると、還元利回りとは「その物件に投下した物件取得価格を何年で回収したいか」ということになります。仮に、還元利回りを6.5%と設定して、その物件の純利益を300万円と想定します。その場合、直接還元法で不動産価値を算出すると、「300万円÷6.5%」という計算式になり、約4,615万円になります。
つまり、事業継承の際に、継承する側の企業が還元利回りを設定し、上記の計算で価値を算出します。その価値の金額に応じて不動産価格が決まり、その不動産の価値が高いほどその企業価値も上がっていくというわけです。
積算法
積算法とは、原価法という呼び方もします。積算法とは、土地と建物の現在価値を算出して、それを合算する時に利用される方法です。まず、土地の価値は「公示価格」「路線価」「固定資産税評価額」「基準地価」で算出されます。
公示地価というのは、国家機関が土地の価値を客観的に算出した価値です。この公示地価を参考に、他の3つの価格も算出します。要は、土地の価値は、公的に定めた価値を参考に算出するということです。
一方、建物の積算価格は「再調達価格×延べ床面積×(残耐用年数÷耐用年数)」という計算式です。上記の「再調達価格」とは、「今同じ建物を建築するとしたらどのくらいの金額になるか」という価格です。つまり、その数字に延床を掛けて(残耐用年数÷耐用年数)を掛けるということは、今建築する価格に経年劣化を加味しているということです。これが、原価法で建物価値を算出した金額になります。
不動産価値の算出法を覚えておこう
不動産価値は主に上記3つの算出方法を利用します。特に、企業価値を調べる必要がある場合は概要だけは頭に入れておきましょう。計算式を丸暗記する必要はありませんが、その計算式が意図することを理解しておく必要があります。