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外国人労働者の受け入れ拡大〜日本の労働市場はどう変わるか?〜


2018年、駆け込むように議題化され承認された「入管法改正案」ですが、その内容を詳しく知らない方も大勢いるのではないでしょうか。そもそもこれまでの入管法はどういった内容なのか、また今回の改正で何がどのように変わるのか、今のうちに詳しく知っておくべきです。こちらでは現状の問題点や課題に触れながら「入管法改正案」について記述していきます。

安倍政権が「外国人労働者の拡大」を急ぐ理由とは?


「外国人労働者の拡大」に対する世論は賛否両論ですが、メディアには安倍政権の動きとしてその方針決定を急いでいるように映りました。具体的な取り組みや制度が明確化されないまま「入管法改正」だけが決定されたことに疑問を感じた方も多い筈です。何故安部政権は外国人労働者の拡大とその為の法改正の決定を急いだのでしょうか。目的として幾つかのことが考えられます。

一つ目に考えられる目的が「外国人労働者獲得競争」における近隣国への牽制です。日本は賃金の高さや労働環境の良さから出稼ぎ先として外国人から人気のある国でした。そしてその労働者の大半が中国人だったのですが、その日本における中国人労働者の人口が近年減少し続けています。上海を中心とした中国の発展が進み、中国人が国を出て働く必要性が低くなったのです。それに留まらず中国に諸外国からの外国人労働者が集まるようになってきています。

中国の他、安倍政権が対抗意識を持っている国に台湾、韓国が挙げられます。両国は日本よりも早くに「外国人労働者の拡大」に向けた取り組みに乗り出しています。特に台湾は日本と同等に出稼ぎ先として人気のある国である為、諸外国の労働者の意識が同国へと向けられることは決定的です。少子化が進む日本において労働者不足は深刻な問題です。具体的な内容が決まっておらずとも「日本も外国人労働者受け入れ拡大に向けて動いている!」というアピールをすることで、外国人労働者の意識が他国に向けられるのを阻止しようとしているのではないでしょうか。

次に考えられる目的が夏の参議院選での支持獲得です。建設や製造に従事する中小企業の多くが労働者不足という深刻な問題を抱えています。それらの企業は「外国人労働者拡大」に向けた「入管法改正」を望んでいます。若くて活気のある労働力を確保出来る他、低賃金化による人件費削減に貢献するからです。そういった人々の支持を得た状態で夏の選挙を迎えたいという考えから、「外国人労働者拡大」に向けた「入管法改正」の決定を急いだのではないでしょうか。

また現状の日本では留学生による過剰労働や、不法滞在、入国者の失踪などが深刻な問題となっています。これらが発生する理由は日本が外国人労働者の就労に寛大な措置を取っていないからです。正規に認められないから偽る、隠れる、逃げるなどという行動に至るのではないでしょうか。こういった問題を一掃する意味でも法改正に積極的な姿勢を見せているのだと考えられます。

「外国人労働者受け入れ」の現状と問題点


そもそも現状の外国人労働者の受け入れ態勢はどういったものなのか、法改正後はどう変わるのか、詳しく説明していきます。

外国人が日本に滞在するうえで在留資格を取得することが必要とされています。その在留資格によってどういった活動が出来てどの期間日本に滞在出来るのかが変わってきます。外交や留学、技能、文化活動、または配偶者としてなど種類は様々で全部で27種類の在留資格が存在します。それらの在留資格の中で今回大きく触れるのは就労に関する在留資格です。

現在日本で働くことが許されている在留資格は「医療」や「研究」、「教育」や「介護」などの指定された業種の他、法務大臣が定める「高度専門職」や卓越した「技能」による在留資格となっています。これらの在留資格の内容には建設現場や工場ラインで働く「単純労働」が認められていません。しかし、1つだけ正規の方法として日本で「単純労働」が出来る在留資格があります。それが「技能実習」という日本での技術習得を目的とした在留資格なのです。表向きは技能実習生として、実際は企業に貢献する労働者として日本で働いている外国人の方が大勢いるのです。

就労が認められていない在留資格者であるにも関わらず働いている方や、在留資格を持たずに不法滞在している方も大勢います。こういったことが在留カードの偽造や、入国者の失踪、外国人の反社会勢力への加担に繋がっているのです。これらのことが起こる理由は日本での外国人による「単純労働」が認められていないことにあるでしょう。新しい外国人労働力を得る目的の他、現状の日本に蔓延る問題を解決する為にも法改正が必要とされているのです。

今回の入管法改正における重要ポイントは「新しい在留資格を設けること」です。「特殊技能1号」と「特種技能2号」という在留資格が追加される予定です。ある程度の日本語能力と労働に必要なスキルがあることを認められれば、日本での労働が認められるという在留資格です。2号を1号よりも高難易度なものとして、その分在留期間も長く設定することになっています。しかし、現時点では1号と2号の区分がハッキリしておらず、区分の明確化が今後の課題となります。また、外国人労働者受け入れ体制を整えるにあたり、外国人労働者専用の健康保険や年金の制度を設ける必要もあるでしょう。

外国人労働者を採用するメリットとデメリット


政府が「外国人労働者の拡大」に取り組んでも、実際に彼らと関わるのは雇用主や一緒に働く従業員の皆さんです。彼らを雇ううえでのメリットにはどういったことがあるのか、またデメリットにはどういったことがあるのか、真剣に考える必要があります。

”外国人労働者を採用するメリット”

・若い労働力が手に入る

外国人労働者を採用する最大のメリットは、若い労働力を手に入れられることです。少子化が進む日本における製造業や建設業では、労働者の高齢化と人材不足が大きな問題となっています。製造では生産が需要量に追い付かず、建設では都市開発やインフラ整備が予定通りに進んでいないのが現状です。それらの問題を解決出来るのが外国人労働者の積極的採用であると言えるでしょう。

・社内の活性化に繋がる

外国人労働者の中には日本で働けることに喜びを感じ、ひた向きに仕事に取り組む方が大勢います。また日本では考えられないアイディアやスキルを持ち寄ってくれるものです。日本で働く日本人の労働者達が彼らと共に働くことによって刺激を受け、意欲が向上し、社内活性化に繋がるでしょう。

”外国人労働者を採用するデメリット”

・在留期間による雇用期間の制限

外国人労働者の採用におけるデメリットは在留資格が許す期間しか雇用出来ないことです。外国人の単純労働が認められても、それは在留資格に設定された在留期間での話です。「特種技能1号」であれば最大で5年間の在留期間となる為、最低でも5年に1度は人員の入れ替えが必要になってきます。

・文化や言葉の違いによる衝突

世間で一番に騒がれているのがこの問題なのではないでしょうか。文化や言葉の違う人間と一緒に働けるのか、同じコミュニティで生活出来るのか、不安な方が多いようです。しかし、このことは日本がグローバル化していく為に必要不可欠な要素なのではないでしょうか。日本は先進国でありながら外国語の習得率が大変低く、周辺の国々がグローバル化を遂げる中それに遅れをとっているのが現状です。またそのことが近年の経済低迷に繋がっています。衝突を恐怖に感じるかもしれませんが、それを受け入れ共存していくことが求められているのではないでしょうか。

まとめ


今回の入管法改正により多くの企業が積極的に外国人労働者の採用を行うことになるでしょう。労働人口の増加により国内産業が充実し、外国人と共に働き共に生活することにより日本のグローバル化が飛躍するでしょう。これらのメリットをより大きなものにする為にも、法改正の具体的な内容設定を急ぎ、制度を充実させる必要がありそうです。