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知らないとダメ!収益還元法とは?

(写真=Beyza-Veysel/Shutterstock.com)
マイナス金利政策のもとでは、銀行の口座に預けたお金からの利息収入はスズメの涙ほどです。他の投資に目を向けて株式に手を出そうにも、不安定な国際情勢で値動きが激しく、なかなか手を出しづらい状況でしょう。

一方、不動産市場は日銀の金融緩和によって余剰資金が流れ込み、活性化しています。有望な不動産市場ですが、投資資金も大きくなるため、対象となる物件の価格が適切なのか、投資を決断する前にきちんと見極めなければなりません。その際、1つの指標となるのが収益還元法による不動産価格です。

2つの方法で、最適な不動産価格を算出

「価格○○万円」「利回り□□%」と不動産投資を呼びかけるサイトなどでは、こうした情報が投資家の目を引き付けるように強調されています。不動産鑑定士や不動産投資歴が長く、その土地にも精通している人でもない限り、これらの情報が適正かどうか瞬時に判断するのは至難の業です。そこで一助ともなりうる収益還元法は、投資の対象とする不動産が将来にわたり生み出す収益に基づいて不動産価格をはじき出すもので、2つの計算方法があります。

1つ目の「直接還元法」と呼ばれる計算方法は、至ってシンプルです。まず、投資する不動産が家賃など1年間に上げる収益をまとめます。例えば家賃5万円、10室のマンションからは年間家賃収入が600万円見込めます。一方、居室の修繕や空室になった際の損失などの経費を考慮する必要があり、ここでは100万円と想定します。つまり、この物件からの年間収益は経費を差し引いた500万円です。

次に還元利回りを設定しますが、これは直接還元法で最も大切な数値で、これにより導き出される不動産価格が大きく左右されます。還元利回りは、周辺相場の類似する物件の取引事例や不動産関連機関が公表するデータなどを参考にします。それによって、還元利回りが仮に5%と導かれた場合、先ほどの収益500万円を還元利回りで割った1億円(500万円÷5%)がこのマンションの価格と導かれます。

運用期間を割引の対象に

もう1つはDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法で、投資する不動産から保有期間中に得られる収益と、その不動産を売却する際の予想価格を現在の価格に割り戻すことで、不動産価格をはじき出すものです。

ここでポイントとなってくるのが、名前の通りディスカウント、つまり割り引く作業です。

具体的には、不動産からの収益が年100万円あり、10年間で1,000万円の収益が見込める場合、1,000万円を今すぐ手にすることができれば、この先の10年の間に他の投資などで運用して1,000万円より増やすことも可能です。つまり、いま手にできる1,000万円と、10年後に手にする1,000万円では価値が異なります。この価値をそろえるため、割り引く作業をして現在の適正な不動産価格を算出します。

例えば、ある物件を2年後に2,000万円で売却すると、2年間の収益200万円と合わせた2.200万円が単純な不動産の価値となりますが、DCF法では2年という時間軸を割り引いて、現在の不動産の適正な価格に反映させるのです。この割引率は、類似する不動産の取引事例との比較や金融資産の利回りなどを参考にして決定します。

割引率が5%のケースでは、1年目の収益は99万5,000円、2年目の収益は99万円、売却価格は1,980万円がそれぞれ割引後の数値となり、合わせた2,178万5,000円が現在の不動産価格としてはじき出されます。

不動産投資は、マンションやアパートなどの実物ともなれば、他の投資と比較しても投資が多額になる傾向があります。このため、不動産業者が提示する物件価格や利回りを鵜呑みにするだけでなく、今回紹介した収益還元法を使って、提示条件が適正かどうかの判断材料としたいところです。