仮想通貨を活用した資金調達方法が、徐々に広まっています。
仮想通貨と聞くと、ビットコインやイーサリアム、リップルなどを思い浮かべます。投機的に購入し、価格が跳ね上がったところを売却するようなイメージが強いかもしれません。
逆に、仮想通貨を購入する側ではなく、発行する側にまわるという考え方があります。
新しく独自のトークンを発行し、自分のビジネスやサービスに価値を感じていただき、出資していただきます。発行したトークンが仮想通貨交換所に上場することで、さらに価値を上げることができます。
ICO(Initial Coin Offering)という言葉があてられており、IPO(新規株式公開)にかけて呼ばれるようになりました。
ICOとは、独自のトークンや仮想通貨を発行し、売却することで資金提供を得る一連のプロセスです。株式を活用した従来の資金調達方法とは別の手段として注目されています。
本記事では、ICOによる仮想通貨で行う資金調達法とそのメリット・デメリットについて紹介していきます。
もし、新しいビジネスやサービスをお考えの場合、資金調達のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
実は簡単!独自トークンのICOによる資金調達法
仮想通貨を使ったICOによる資金調達法は、他の資金調達に比べてハードルは低いです。現法律では審査などなく、専用のアプリと口座、そして仮想通貨(ビットコインやイーサリアムなど)があれば、投資家へトークンを販売することができます。
準備が整ったら、実際に資金調達までのプロセスをたどります。以下に、仮想通貨による資金調達のプロセスをまとめます。
- :アナウンス・ホワイトペーパーの作成(計画の発表)
- :オファー(提案・告知)
- :PR(宣伝)
- :トークンの販売(トークンセール)開始
- :契約の実行
アナウンス・ホワイトペーパーの作成
資金調達をするために、プロジェクトのアナウンスを行います。いわゆる事業計画の発表とイメージしてもらうとわかりやすいです。
投資家にアナウンスをすることで、プロジェクトの内容を吟味してもらい、正当性や判断を伺います。
内容をまとめたものをホワイトペーパーと呼ばれています。ホワイトペーパーに記載される内容は、以下のものが多いです。
- トークンセールの開始日や〆切日
- 資金調達の目的とプロジェクトの内容やロードマップ
- 発行するトークンの性質や保有するメリット
- トークンに関すること(総発行量や割当先、法的側面やリスクなど)
2018年8月現在、ホワイトペーパーの作成は義務付けられていません。しかし、プロジェクトの魅力やビジョンや情熱を伝えるには良いツールです。
オファー(提案・告知)
オファーは「投資家に対して、プロジェクトへの出資を募る内容」になります。
投資額や期限を指定して、トークンの売却について規定します。プロジェクトにおけるトークンの価値設定は、明確な基準が決められていないため、個別で設定することができます。
PR
2018年現在では、ICOの多くは、無名のスタートアップ企業や個人プロジェクトです。
そのため、基本的には認知されていないことが多く、投資家の方へ広く知ってもらう必要があります。
PR戦略は資金調達をする上でとても重要で、成功すればより多くの資金が集められるでしょう。
どんなに優れたプロジェクトでも、知られていなければ意味はありません。ICOは、インターネット上の不特定多数の方から資金を集めるため、バイラルを引き起こすSNS戦略は武器になります。
多くの方に広く知ってもらうためにも、ホワイトペーパーとセットで戦略を立てるのが鍵になりそうです。
トークンの販売(トークンセール)開始
PR終了後、実際にトークンの販売(トークンセール)を開始します。ホワイトペーパーなどに記載されたとおりの開始日と〆日、ルールで行います。
契約の実行
トークンセールによって、資金調達が完了したら、その後は契約の実行です。
プロジェクトを進行していくことが役目になります。トークン保有者はリターンを期待し、購入した方々への責務でもあります。
仮想通貨による資金調達のメリット・デメリット
仮想通貨による資金調達の方法やプロセスは理解できたかと思います。
他の資金調達の方法と比べて、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、デメリットは存在するのでしょうか。
資金調達を行う側と出資者側の観点で見ていきます。
メリット(資金調達側)
一番のメリットは、短期間で想像以上の資金を調達できることです。
株式などの資金調達法は、証券会社など第三者を挟むことになります。例えば、IPOによる資金調達は、かなり厳しい審査と時間がかかるため、タイムラグが発生します。
スタートアップ企業は、銀行や金融機関からの融資が受けられない可能性もあります。ICOによる資金調達は、プロジェクトの実績がなくとも、構想段階から資金調達ができてしまいます。
短期間かつ海外からも幅広く資金調達ができるため、莫大な金額が集まる可能性が出てくるのです。実績として、数十億以上の資金調達に成功した企業があるというのも納得できます。
経営サイドからすると議決権を渡さず資金調達できるというのがメリットです。将来、大きくなっても経営に影響を受けずに運営できるのはかなり大きいです。
メリット(投資家側)
投資家側(トークンを購入する側)からメリットを見ていくと、大きく儲けられる可能性があるためです。
安い価格でトークンを購入し、プロジェクト成功の後に、価格が大きく跳ね上がる可能性があります。
ICOによる価格の大幅な上昇により、売却すれば、莫大な儲けを出すことができます。また、少額から投資できるのもメリットのひとつでしょう。
国内外の企業や無名のスタートアップ企業に出資でき、想像を超えたプロジェクトと出会えるというのも魅力です。
デメリット(資金調達側)
仮想通貨を活用した資金調達法は、法規制がされていないことがデメリットです。
そのため、資金調達はするもののプロジェクトが一向に進まないというような詐欺まがいのことが発生しているという現状もあります。
そのため、世間のICOへの懐疑的な見られ方や風当たりの強さがあり、イメージダウンに繋がってしまう可能性もあります。
何が合法で何が違法かというのも明確にわからないというのも事業者としては怖いところです。
技術的な面や法務的な面をクリアするために、専門のIT企業や会計事務所にアウトソーシングをするのが一般的です。
そのため、イニシャルコストが思った以上にかかります。仮想通貨による資金調達から、それらをペイできると考えますが、トークンセールが失敗する可能性もあります。
思った以上に流通せず、価格が上昇しなければ、投資家にそっぽを向かれてしまう可能性があります。
デメリット(投資家側)
十分な法整備がされていないため、詐欺案件の可能性もあります。たとえそうでなかったとしても、大きな変動がなければ、購入しても損してしまうことも。
これらは、未公開株や他の資金調達に関しても言えることですが、仮想通貨の場合、法律が整備されていないことが、不安を増長させます。
また、ICOを目的としているとはいえ、必ずしも上場されるわけではありません。そうなると、トークンの活用に制限がかかってしまいます。
投資家に後悔させることのないように、しっかりと伝えておくことも大事なことのように感じます。
まとめ
仮想通貨における資金調達は、技術的な面や法律的な面をクリアする必要があるものの、第三者における審査がなく、準備が整い次第、実行できるというスピード感が魅力的です。
さらには、インターネットを通じて国内外問わず広く出資を募ることができるため、想像以上の額が集まる可能性が出てきます。
株式による資金調達とは違い、議決権を渡すことにならないのも経営サイドからすると魅力です。
法律面が整備されていないことで、何が合法で、何が違法なのか解釈が難しいところもあります。ICO詐欺のようなものが発生しているため、世間一般の風当たりの強さがあり、ブランディングに影響を及ぼす可能性も出てきます。
課題はたくさん残りますが、それを上回るメリットがあるように感じます。資金調達を検討するのであれば、仮想通貨もひとつの手段と考えてみてはいかがでしょうか。