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エンジェル投資がスタートアップビジネスの資金調達環境を変えつつある

CVCの急増による資金調達環境の変化、多くのビジネスが加速新たに起業してビジネスを開始しようとする場合に必要となるのが資金の調達です。資金調達といえば銀行からの借り入れというのが定番でしたが、インターネットの発展により社会が情報化されるに従って、多様な資金調達手段が利用可能となっています。以下では、その中からエンジェル投資にフォーカスしてその内容や今後も増え続ける理由について見ていくことにします。

エンジェルとは?どのような投資をする?

まず最初に、エンジェル投資とはどういったものであり、そこでいうエンジェルとはいかなるものなのかについて触れておくことにしましょう。

もともとエンジェルという言葉は、アメリカやヨーロッパの、ブロードウェイやハリウッドといった演劇業界において、事業を支援している個人のことを指して用いられていました。それから派生して、企業家が新たにビジネスを開始しようとする場合に、それを支援すべく投資を行う投資家のことを「エンジェル」や「エンジェル投資家」と呼ぶようになったというわけです。エンジェルと呼ばれる投資家が行う投資の特徴としては、一部例外はあるものの、多くの場合は500万円から2,000万円ほどの小額投資が中心であるということです。個人投資家ということで、金融機関のように巨額の資産を有しているわけではないというのが一つの理由ですが、もう一つの理由としては投資家自身が投資先のリスクを分散させるために、一つの事業だけでなく複数の事業に投資するためです。

このエンジェル投資は、欧米においてはメジャーな資金調達手法です。ITセンターとして世界中にその名が知れ渡っているシリコンバレーがそこまでの規模に成長することができたのは、名のある多くのエンジェルが投資したからであるといわれており、GAFAと呼ばれるGoogle、Amazon、Facebook、Appleといった巨大企業ももともとはエンジェルたちから出資を受けて起業された会社です。こういった会社が起業した当時はそのビジネスがうまく軌道に乗るか誰も確信が持てなかったため、金融機関のように伝統的な貸付審査を行うようなところでは融資することが困難でした。そこで、積極的にリスクをとってリターンを得ようとするエンジェルたちが、その資金ニーズに応えることとなり、結果としてアメリカが世界の技術の最先端を担うようになったというわけです。そのため、アメリカの繁栄はエンジェル抜きには語ることができないといっても過言ではありません。

なお、エンジェルが行う投資は、ハイリスク・ハイリターンを狙うというのが特徴です。もっとも、彼らもギャンブラーではありませんので、投資を行うにあたっては、これから投資しようとしている企業が行う事業の将来性を細かく分析して、成功についてそれなりの確度があるかを見極めようとします。そのため、エンジェルから投資を受けようとする場合には、単に面白いビジネスアイデアを持っているというだけでは不十分であり、それをビジネスプランに落とし込んで、5年後や10年後のどの程度の収益が見通せるかを、説得力をもって説明できるようにすることが必要となります。また、事業が成功するためには、企業家自身が魅力ある人物であることも一つの重要なファクターとなるため、出資を希望する企業家は常日頃から自らを律し、研鑽を積んでおくことも必要となります。

スタートアップでエグジットした人がエンジェルになるエコシステムも

では次に、どのような人物がエンジェルとして投資を行うようになるのでしょうか。代表的なエンジェルとしては、スポーツ選手や俳優など、各分野で成功を収めたセレブリティを挙げることができます。彼らは自らの成功によって大きな財を築くことができたわけですが、その次にその財をさらに増やすことを考えるだけではなく、いかにして他者に還元するかということに重きを置くようになります。欧米では特に成功者が慈善事業やボランティアなどに取り組むことが多い傾向にあるということが、その背景にあります。そのため、彼らが投資しようとするのは、単に優れた企業家というよりも、金銭的困難を抱えながらも大学を卒業して起業しようとしている苦学生などがターゲットとなることが多いようです。

加えて、エンジェルになる可能性が高いのが、かつて自らがエンジェルから投資を受けてスタートアップ企業を設立し、ビジネスを成功させてエグジットしたような人物です。企業家のなかには、成功した後もビジネスを拡大し続けようと経営に従事し続けるタイプと、成功後はなるべく早期に保有株を手放して経営から身を引こうとするタイプの二種類が存在します。このうち、特に後者についてはエグジットによって巨額の資産を手に入れることができるため、その資産を使って次世代の企業家を育てようとエンジェル投資家へと転進を図るのです。それによって、かつて自身がお世話になったエンジェル投資に報いることができますし、投資がうまくいけば築き上げた資産をさらに大きくできることから、彼らにとっても大きなメリットのあることであるといえるでしょう。

このように、エンジェルがエンジェルを育てるという一種のエコシステムが存在することによって、一度エンジェル投資が定着したマーケットにおいては次々にスタートアップ企業が登場して、そこから新たな技術革新が生まれてくるという経済の好循環が生み出されることになるというわけです。その意味では、エンジェル投資は国家が経済力を高めるために不可欠の投資手法ということができるかもしれません。

今後もエンジェルが増え続ける理由

最後に、エンジェルたちが今後どうなるかについても触れておくことにしましょう。

基本的に、エンジェルの人数は増えることはあっても、減ることはありません。マーケットがますます拡大し、かつグローバル化が進むことから、そこで活動する企業の数は加速度的に拡大し、それに伴ってエンジェルを必要とする資金ニーズが拡大していくことが期待されているというのが第一の理由です。エンジェルのニーズが増え続ける以上、その人数が減ることはないということです。

二つ目の理由としては、前述したようにかつてのエンジェルが成功してエグジットした後に自らがエンジェル投資を始めるというエコシステムが確立されていることが挙げられます。エンジェルは複数の企業に投資することから、投資先からさらにエンジェルが生まれれば、結果的にエンジェルの数が増えることになります。一人のエンジェルが二人以上のエンジェルを生み出すことによって、エンジェルは増え続けていくというわけです。

さらに理由の三つ目としては、インターネットの登場による情報化の進展があります。かつてはエンジェルから投資を受けるためには、企業家がエンジェルに直接会いに行って出資を求めるしか方法がありませんでしたが、現在ではインターネット上でエンジェルと企業家をマッチングするような仕組みも整えられており、両者が接点を持つ機会が大きく増えています。これにより、より簡単にエンジェル投資を行うことを促し、それほど多くの資産を保有しているわけではない一般のビジネスマンなども、自分が気に入った企業家を見つけて気軽に投資することができるようになっています。このようにエンジェルの裾野が広がることで、その数はさらに増えることになるでしょう。

まとめ

以上で見てきたようにエンジェルは、企業家が資金調達を行って新たにビジネスを行うために不可欠の存在となっています。エンジェルがエンジェルを育てるというエコシステムが確立されている以上、今後もエンジェル投資は拡大を続けることが見込まれ、世界の経済を支えるとともに、新たな技術革新を生み出す大きな力となるに違いありません。