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事業継承のためのM&Aを成功させるポイントとは?

事業承継には、親族内承継や従業員への承継、そして第三者への承継であるM&Aの大きく3つに分けられます。M&Aと聞くと大企業同士の合併や経営再建の一環として行われるものをイメージする方も多いでしょう。しかし、後継者探しに難航する流れの中、特に中小企業では事業承継の1つとしてM&Aを選択する企業が増えています。今後も増加が予想されるM&Aでの事業承継を成功させる上で押さえておきたいポイントを紹介します。

買い手の事業への理解度が重要


事業承継の方法は、大きく3つに分けられます。親族内承継、従業員への承継、そしてM&Aです。M&Aでの事業承継を成功させる上で重要なポイントは、3つです。

まず、「買い手の事業への理解度」、次に「売却後の売り手の協力度」、さらに「従業員の理解と協力」です。

1つめの「買い手の事業への理解度」を説明する前に、事業承継におけるM&Aについて説明します。M&Aは企業合併と企業買収を意味しますが、日本の中小企業では企業合併されることが少なく、企業買収のうち株式譲渡が多数を占める傾向にあります。株式譲渡は株式の取得で済むため手続きが簡単で、売り手にとっても会社が存続するため抵抗感が弱いというのも大きな特徴でしょう。そのため、後継者不足が続く現代では、事業承継としてM&Aが急増しています。では、事業承継におけるM&Aを理解した上で、買い手側からみたM&Aの目的を考えてみましょう。

買い手側からみたM&Aの目的は多くの場合、事業買収により新たな人員やノウハウを手に入れ、会社の多角化や規模を拡大することにあります。中小企業では、技術や職人がいるにも関わらず有効に使いこなせていない現実があります。そうしたノウハウや人材を埋もれさせておくのは損失とも言えるでしょう。M&Aによりノウハウを手に入れ、人材を活用することで状況が打破され、双方の会社にとって成長が望める可能性は多いにあります。こうしたメリットや、反対に損失を被る可能性などのデメリットを含めた上でM&Aは行われますが、成功させるためには数字などのデータだけではなく、買い手側、売り手側の「心」が重要です。

事業承継の中でも、親族内承継や従業員への承継と異なり、M&Aはお互いに信頼関係がないところからスタートします。事業承継で大切なのは、「なぜ承継したいのか」という気持ちです。M&Aと聞くと利益先行のイメージが強い、という方もいるでしょう。しかし、事業承継のM&Aに関しては、今までその企業が作り上げてきた商品やサービスを今後も引き継ぎ、世の中の役に立ちたいという気持ちが大部分を占めています。もちろん、数字やデータは重要です。少なくとも一般企業であれば利益を追求するのは当然の姿勢でしょう。そうしたデータは多くの場合、成功にも繋がっています。しかし、事業承継における成功は、利益や規模の拡大などの経営としての思惑や事務的な手続きだけでなく、買収する企業側の気持ちも考える、という買い手の理解度が重要です。「買ってやる」という気持ちではなく、「売ってもらう」というスタンスで臨みましょう。信頼関係がないからこそ、お互いに思いやる気持ちが成功へのポイントと言えます。

売り手が売却後も協力してくれるかどうか


M&Aによる事業承継において成功するポイントの2つめは「売り手側の協力」です。信頼関係を築く上で、思いやりの気持ちを持つことが大切だと述べましたが、それは買い手側だけでなく、売り手側にも通じます。親族内承継や従業員への承継であれば、ついあれこれと経営に口を出してしまうという先代経営者は多いでしょう。しかしM&Aとなると、すでに事業は手を離れ、第三者の手に渡ってしまった、という思いから、口出ししたくてもできず、本当にこの買い手で良かったのか、などと不安に思うこともあるかもしれません。特にM&Aで手放してしばらくはそうした思いに駆られることもあるでしょう。しかし、ここで重要なのは、買い手側の企業に任せる、という覚悟です。

そもそも、M&Aによって事業承継を行う目的は何なのでしょうか。売り手側としては、後継者問題が1番多いようです。その他にも、赤字事業を売りたいケースなど、資金面の理由でM&Aを希望する場合もあります。特に後継者がいない企業は多く、団塊の世代と呼ばれる経営者層が70代を迎えると、M&Aによる事業承継の数も急増しており、今後も増え続けるでしょう。M&Aによる事業承継は一般的と言えるまでになってきています。では、事業承継が成功するには互いを思いやる気持ち以外にどのような協力が必要なのでしょうか。それは、後継者が仕事をしやすい環境を整えることです。これは、経営者が後継者に果たすべき責務とも言えます。株式や財務、事業の整理や役員に関しても経営陣の見直しを行いましょう。買い手側にとってどのようなリスクが脅威になるのか、どのような要素が魅力的に映るのかを考え、努力することが大切です。

さらに、売却後にも協力することが事業承継の成功へと繋がります。経営してきた企業を今後も存続させ、発展させていくために、買い手が求める環境や状況を整える努力が必要です。売却後に問題が起こる場合もあるでしょう。そうした場合でも、もう手が離れた会社だから、と他人事に捉えるのではなく、助けを求められたら誠実に対応することが、売却後の成長にも関わってきます。特に、残される従業員が気持ち良く働く上で、売却後の売り手オーナーの関わりが重要と言えるでしょう。

もともといた従業員に気持ちよく働いてもらうための方法は?


事業承継は企業の経営陣だけの問題ではありません。企業には、その企業を支える従業員が働いており、従業員なしには企業は成立しないと言えるでしょう。事業承継のM&Aでは、売り手側の経営者が気にかけていることが多いのが、残される従業員のことです。特に事業承継のM&Aでは、従業員の雇用維持が目的であることも多いため、M&A後に従業員が辞めざるをえない状況になってしまうのでは本末転倒と言えます。では、もともといた従業員に気持ちよく働いてもらうためにはどうすれば良いのでしょうか。

それには、売却後の売り手側の経営者が重要な役割を果たします。まず、従業員が不幸になる典型的なM&Aは、どのようなものでしょうか。

M&A後の望まない変化や、会社と反りが合わなかったり尊重してもらえなかったりなど、M&A後の会社との折り合いが悪い場合が挙げられるでしょう。大なり小なり、M&A後には会社は変化します。変化への対策は、慣れることが1番ですが、少なからず従業員は変化の中でストレスを感じます。中には残念ながら退職してしまう方もいるでしょう。ノウハウも経験も積んだ従業員が退職してしまうのは、会社としては大きな損失です。M&Aでの事業承継が成功するためには、こうした「ヒトの問題」を解決が不可欠でしょう。

こうした問題を未然に防ぐために、売り手側の経営者はM&Aの際、従業員を任せるに値する買い手を選んだり、買い手の組織文化を理解し、相性を考えたりする必要があります。また、M&Aの人事計画について詳しい聞き取りを行いましょう。買い手側と十分意思の疎通を行い、情報を共有することが重要です。さらに、M&A後も買い手側の意向を聞いた上で、積極的に仲介役を担い、買い手側との橋渡しを行います。こうした売り手側のサポートで、従業員が生き生きと働ける会社になるでしょう。

【まとめ】会社に関わる全ての「ヒト」が成功を導くポイント


事業承継でM&Aをする際のポイントは、売り手も買い手も、そして従業員も含めた全ての「ヒト」にあると言えるでしょう。企業である限り、利益を出すことは言うまでもなく重要です。しかし、ヒトを顧みず利益ばかりを求めると失敗してしまう可能性があります。利益を生み出すのは経営陣や従業員の努力でもあるからです。そうした努力を生む上で、互いを思いやり、尊重する気持ちは欠かせないポイントと言えるでしょう。